離れた場所にある機器を結びたい。その欲求を満たすため、通信技術はより遠くへ信号を届けるべく開発が進んできました。しかし、最近の無線通信では逆に「遠くへ届かない」ことがよしとされる場面も増えているようです。例えば、無線LANの電波が遠くへ飛びすぎると、複数の電波が干渉して通信速度が落ちる、悪意のある第三者に通信を傍受されるリスクが増大する、といった不利益が生じます。

 オフィス家具大手のイトーキが先日発表した「LANシート ライト」は、シート内に無線LANの電波を閉じ込めることにより、シートの上に置いたPCやタブレット端末だけが接続できる無線ネットワークを構築できる製品です。東京大学発のベンチャー・セルクロスが開発した技術を応用したもので、両社ではこの技術を「2次元通信」と呼んでいます。文字通り「線」でつなぐ有線通信が「1次元」、全方向に電波を飛ばす従来の無線通信が「3次元」であるのに対して、シートの面でつながるから「2次元」というわけですが、有線通信並みの速度やセキュリティと、ケーブル接続が不要という無線通信の利便性のいいとこ取りという点でも、1と3の中間の2というのはうまい表現だと思いました。

 「LANシート」自体はすでに数年前に製品化されており、今回はその改良版ということですが、モバイル機器の普及でオフィスの無線通信環境が厳しくなりつつあるなか、じわじわと需要も高まっているそうです。映画やテレビの世界では2Dから3Dへの進化がブームになりましたが、テクノロジーには3Dから2Dへと変化する分野もある、というのは意外な発見でした。(日高彰)

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イトーキ より薄型化したシート型無線LAN新製品
メールマガジン「Daily BCN Bizline 2015.12.2」より