BOOK REVIEW

<BOOK REVIEW>『不動産激変――コロナが変えた日本社会』

2020/12/11 09:00

週刊BCN 2020年12月07日vol.1853掲載

「オフィス受難時代」が到来

 コロナ禍の社会変容が、「不動産のプロ」の目にはどう見えているのかを分かりやすく解説している。商業施設やホテル、旅館、住宅、オフィスビルなどにかかわる不動産ビジネスのうち、コロナが収束したあとも長期にわたって変化の波にさらされるのは都心のオフィスビルだと指摘する。

 サラリーマンの多くがリモートワークを経験し、「通勤なんかしなくても仕事はできたんだ」という気づきを「共有」したことは、今後の不動産ビジネスに大きなインパクトを与える。場所に縛られない働き方は、コロナ禍の一過性のものではなく、広く定着化していく可能性が高い。オフィスの在り方そのものを大きく変えていくことにつながる。

 都心のオフィスに通うことに少なくない価値を見いだしていた従来の価値観は、コロナ禍とともに終焉。これからのオフィスは、「時折、社内外の人と会って互いの存在を確認しあうだけの場」になっていく。結果として都心の一等地にある贅沢なオフィスの“床が余る”現象は避けられない「オフィス受難時代」が到来すると筆者は見ている。

 もちろん、「縮む」分野があれば、「伸びる」分野もある。都心のオフィスに縛りつけられてきた多くのサラリーマンにとって、リモートワークの定着化は消費スタイルの変化につながる。自分たちが住む街で一日の多くの時間を過ごすようになると、人々が「街」に求めるものが変わり、その結果として居住地を起点とした新しい不動産ビジネスのチャンスが生まれると分析している。(寶)
 


『不動産激変――コロナが変えた日本社会』
牧野知弘 著
祥伝社新書 刊(880円+税)
 
  • 1