神戸市などを拠点とするコベルコシステムは、顧客の多くを占める製造業向けのシステム開発に強みを持つ。資本参加する日本IBMから得た大規模システム構築のノウハウや高いブランド力を生かし、ビジネスを強化してきた。瀬川文宏社長は、成長戦略への布石や社員の育成に取り組みながら、将来的にはグローバルで認められるソリューションを生み出したいと意気込む。
(取材・文/下澤 悠)
豊富な製造業向けノウハウ
――事業の概要は。
SIerとしてシステムの企画・構想から開発、保守・運用まで、ライフサイクル全般のビジネスを展開している。受託開発のほか、インテグレーション事業ではSAP製品や「mcframe」といった基幹システムのパッケージをメインに、製造業向けの設計分野や現場のソリューションをそろえている。
顧客層は製造業が多い。事業の内訳はおおむね35%が神戸製鋼向けで、15%が日本IBMを通じたもの、50%が独自の顧客向けになる。地域としては比較的西日本が多いが、顧客は広く全国に抱えている。
――自社の強みは何か。
神戸製鋼で培った製造業の業務やシステムに対する知識を持っていること、そして日本IBMから指導などを受けた先進技術の活用やプロジェクト管理手法、大規模システム構築のノウハウが強みだ。SAP製品と製造業向けのmcframeに関しては、いずれも国内でトップクラスのパートナーだと自負しており、われわれの戦略的なブランド資産になっている。製造現場系のシステムやオペレーション側のネットワーク、セキュリティー、クラウドサービスなども含めてワンストップで提供できることも特徴だ。
成長のかぎは基幹システムの周辺に
――顧客企業が抱える課題は何か。
一番大きな課題は、デジタル化を自社で進めるためのIT人材の不足だと感じている。従来の基幹システムだけでなく、製造業では例えば設計や現場のデジタル化、データ分析、AI活用などを進める必要性が出てきたが、社内にリードできる人材がおらず採用も難しいという現状がある。
瀬川文宏 代表取締役社長
そうした顧客に対して、われわれは内製化のごとく、一社員のようにアドバイスしながら構築に寄り添うアプローチをとるべきだと考えている。今後ニーズが出てくると予想している。
――SAP案件を得意としているが、マイグレーションの需要は大きいのか。
まだまだ需要は存在しているものの、生成AIの登場で少し潮目が変わってきたところがある。数年前までは案件が非常に多く、人材が足りずにベンダー同士で技術者を融通し合う仕組みをつくって活用するほどだったが、最近は様子見の企業が増えてきたように思う。AIが人材不足の穴を埋めてくれる期待から、「崖を乗り越えられる橋がかかった」といったイメージがあるのではないかと感じている。
――その先の成長戦略としては。
従来は基幹システムの受託開発やアウトソーシングがメインの仕事だったが、今はSAP製品などをパッケージでそのまま使い、業務をシステムに合わせていくFit to Standardの潮流がある。とはいえ、各企業がこれまで改善や創意工夫を重ねてきたシステムは基幹の周辺につくり込んでいく需要が必ず発生してくるとみていた。2024年から事業開発本部を立ち上げそうした需要に対応する投資をしてきたところ、この2年間で2桁成長をしている。この事業をどれだけ伸ばせるかがかぎになるだろう。
AI活用前提にビジネスを変える
――現在力を入れて取り組んでいることは何か。
まずはAIの活用を前提に人の働き方を変えていく必要がある。人の仕事をもう一度見直し、どんな責任を持ちながらAIを監視・管理した上でアウトプットを出していくかを考えないといけない。社長と全社員のミーティングを各地で毎年開催しているが、今年のテーマはAI活用としている。「皆さんの仕事の20%をAIに任せましょう」と呼びかけ、全国行脚で新しい働き方を浸透させようとしているのが喫緊の取り組みだ。
また、われわれのビジネスは相変わらず「人月」の単価を基に見積もりを出すスタイルが大半を占めているが、AIの導入を考えればこうしたビジネスモデルは早く変えないといけない。今年は工数ビジネスからの脱却を実現しなくてはならないと力を入れている。
そして、顧客接点を持つ社員に当社で働くことによる幸せや成長、達成感を感じてもらわなければいけないと考え、5年ほど前から人材戦略委員会を立ち上げている。企業文化や組織風土、人事制度を見直しながら、社員のモチベーションを上げられるように努めている。
――将来的な構想は。
日本はやはり製造業の国だという思いがあり、お客様と一緒に日本の競争優位性を築きたい。日本の製造業が使う当社のシステムが最終的にはグローバル市場で認められるような、そんな企業ブランドになりたい。目指すべきは世界でも通用するソリューションやサービスを生み出すことだ。
Company Information
神戸製鋼所の情報システム部門が分社・統合し、1987年に設立。株主は日本IBMが51%、神戸製鋼が49%を保有している。製造業向けの基幹システムのライフサイクル全般のサービスなどを広く手掛ける。関連会社を含む従業員数は1938人(2026年4月1日現在)。神戸市と東京都品川区に本社を構え、全国に拠点を置く。25年度の売上高は577億円。