今も残る絶対服従の「新兵」訓練
「体育会系」と言えば、上級生の言うことには絶対に従う上意下達の組織であり、指示通りに従う使いやすさから就職にも有利だとされてきた。民間企業はもとより、警察や消防、自衛隊に至るまで上官の命令を忠実に遂行する優秀な“兵”は、いつの時代も重宝されることは容易に想像がつく。
学校教育における体育は、明治政府が近代的な軍隊を整備する一環として、教科の一つに取り入れたことが始まりとされる。スポーツ教育学者の著者は、明治維新から現代に至る学校体育の歴史をひも解き、どのようにして体育会系の文化が形成されたのかを分析。戦後になって軍事教練の側面は後退したものの、軍隊式の上意下達や新兵訓練、後輩しごきの慣習は残った。
先輩後輩の固定的な上下関係の中で、権力を握った上級生による下級生への恣意的なしごきが暴力事件として、しばしば不祥事として明るみに出る。1960年代の大学紛争を契機に事件化し始めたことから、本書では大学スポーツに焦点を当て、閉鎖的な上下関係の構図やトップアスリートが引退したあとの就職先について論じている。その上で、学業とスポーツのバランスや、就職を意識したキャリア形成をいま一度考える必要があると説く。(寶)
『体育会系~日本のスポーツ教育が創った特異な世界』
小野雄大 著
中央公論新社 刊 1056円(税込)