▼ある日、テレビを見ていると、ランサムウェア攻撃を受けた大手企業の社長が心境を語っていた。対応に追われる従業員が疲弊するさまを振り返り、「本当は早く復旧してほしいが、(従業員が)健康を損なったら取り返せない」と涙ながらに話していた。
▼別の日、SNSを眺めていると、先の会社とは異なるランサムウェア被害企業が「危機を乗り越えられた原動力は、お客様でした」として、セールを宣伝していた。
▼重大なセキュリティー被害に際して、従業員をおもんぱかったり、顧客に感謝したりする気持ちは否定しない。ただ、それを美談のように仕立て、企業イメージの回復につなげようとするマーケティング戦略は(それがビジネス上必要だと理解はするが)どうも薄寒く感じてしまう。
▼被害企業に罪はない。しかし、結果として、ステークホルダーに陰に陽に悪影響を及ぼしている事実は残る。メディア露出にしても、例えば、報告書で示した対策の進捗や課題を丁寧に説明するなど、攻撃に関する知見を社会に還元する姿勢をもっと打ち出しても良いだろう。「ピンチをチャンスに」とは言うものの、ピンチを招いた真因と本当に向き合っているのか。首を傾げてしまう。(無)