悪趣味さすら懐かしい90年代の空気
「電気グルーヴ」という、常識の外側を走り続けてきたテクノ音楽のバンドがある。前身のグループも含めれば40年以上活動を継続し、なお唯一無二の異物感を放っている。本書は、1991年から94年にかけて放送された彼らのラジオ深夜番組「電気グルーヴのオールナイトニッポン」で構成を担当した放送作家による回顧録である。
メンバーとの出会いから、彼らがサブカルチャーの旗手として一躍有名になっていく様子が、あくまで個人的な視点だが、それだけに生々しく描かれている。あえて時系列順を取らず、登場する人物やエピソードの強度や関連性を強調するかたちで並べられているのも面白い。
世界の音楽シーンで通用する卓越したセンスを持つと同時に、当時は下品で悪趣味、露悪的な振る舞いが人気を集めており、番組の内容はハチャメチャで、とても週刊BCNには書けない逸話にあふれている。ただ、ややもすれば文化的にはドライで空虚な時代と見られがちな90年代に、学校の教室では“2軍”に位置付けられるようなオタク層によって豊潤なカルチャーが育まれ、そこには確かに熱狂があったことを本書は現代に伝えている。単なるファンブックではなく、時代の体温を封じ込めた証言集である。(螺)
『オールナイトロングー私にとっての電気グルーヴのオールナイトニッポンとその時代ー』
椎名基樹 著
双葉社 刊 2750円(税込)