中小企業に広がる「従業員承継」の実態とは
IT企業において後継者の不在が事業継続の課題となっていると聞く。1990年代前後にITビジネスで起業した経営者が引退期を迎えつつあるものの、後継者を見つけられないケースが中小企業を中心に増えているそうだ。そのまま廃業となれば、従業員やその家族、取引先といったステークホルダーに及ぶ影響は少なくない。
近年、国内の中小企業では従業員による事業承継が増加傾向にあるという。一方で、その広まりとは裏腹に、体系的に整理された研究は乏しく、従業員承継を適切に進めるための実践的なメソッドも不足しているとみられる。
本書は、中小企業における従業員承継について構造的に分析し、その実態を解き明かす試みである。著者は大株主ではない従業員が事業を承継することで、「オーナー=経営者」が当たり前だった中小企業でも「所有と支配の分離」が起こると指摘。さらに、非オーナー経営者の最終決定権を支える存在として「経営者保証」の有用性を説く。その上で、経営者保証を引き継ぐことのできる人材の育成が重要と呼び掛ける。
後継者育成に悩む経営者はもちろん、従業員にとっても、企業のこれからについて理解を深められる一冊だ。(無)
『中小企業はだれのものか 従業員承継が生む「新しい支配」』
津島晃一 著
同友館 刊 3080円(税込)