店頭流通

特報  「深刻化する万引き被害」(上) 年7億5000万円の損害

2002/04/15 16:51

週刊BCN 2002年04月15日vol.937掲載

 パソコン専門店やカメラ量販店で、万引きの被害が深刻化している。パソコン市場が縮小し、ビジネス環境が厳しさを増すなか、万引きが収益に及ぼす影響が看過できない状況になってきた。日本電気大型店協会(NEBA)では、2001年から防犯対策委員会を設置し、被害をなくすことに注力。各店舗では万引き防止装置を設置し、対策を講じているものの、商品パッケージの外側に貼付してある防犯タグを剥がされる事態も発生している。最近では、インターネットでさまざまな情報を収集できるため、万引きの手口も複雑化している。(佐相彰彦)

もはや看過できず、防犯に乗り出す

■換金目的の犯罪急増

 NEBAによると、加盟店46社の盗難・万引きに関する2001年の被害額は、前年比18.31%増の約7億5000万円だった。1社あたりの被害額は約1629万円という計算になり、相当な額に達する。

 NEBA事務局の小林淳氏は、「換金目的の高額商品が狙われていることが被害額増加の要因。今後も換金目的の盗難が増え続ければ、被害額も拡大していく」と話す。

 ヨドバシカメラでも被害は深刻だ。ヨドバシカメラ新宿西口本店統括店長の日野文彦取締役は、「ヨドバシカメラ全店で、毎月およそ100万円の盗難被害がある」と漏らす。年間約1200万円の被害額だ。

 大手パソコン専門店を中心に私服で警備を行っている防犯サービス会社、エス・エスサービスのセキュリティ事業部・佐藤邦彦業務部長も、「かつて万引きは、『購入したくてもお金がなく、つい出来心で盗んでしまった』というケースが大半だった。しかし、最近は換金目的の万引きが急増している。秋葉原地区では、被害額が1店舗あたり月平均で数十万円から数百万円あり、年間では億単位に上るのではないか」と分析する。

■盗難のトップはPC

 NEBAによると、被害額が最も多かった品目はパソコンで、構成比で全体の32.23%を占めた。次いで、ビデオカメラが26.59%、パソコン周辺機器が8.56%、デジタルカメラが7.87%、ポータルブルオーディオが3.33%と続く。上位5品目だけで全体の78.58%を占めている状況だ。

 NEBAでは、防犯対策を重要課題の1つとしており、昨年9月に「盗難防止対策委員会」を設置。同10月に「防犯対策委員会」と改称し、今年2月末までに計5回の会合を重ね、対策を練っている。

 現在、防犯対策としては、万引き防止装置の設置が最善策という。これは、商品パッケージの外側に防犯タグを貼付し、不正な持ち出しを出入口のセンサーで監視する仕組みだ。

 だが、NEBAの小林氏は、「パッケージの外側に防犯タグを貼付しても、店員が見えないところで剥がされてしまっている。また、被害が多い商品は、高額なものやサンプル品が多い。サンプル品を盗難するのに鎖を切断しているようだ。そのため、現状のタグ貼付だけでは効果がない」としている。万引き防止装置と防犯タグだけでは、盗難を防げないケースが多いということだ。

■ネット情報で手口複雑化

 ヨドバシカメラの日野取締役は、「店員の防犯技能を高め、防犯に努めるしかない。とにかく顧客から目を離さないこと」と話す。店員のスキを減らせば、盗難件数も減らせるとの考え方だ。このような対応は、防犯だけでなく、接客レベルの向上にも通じる。

 エス・エスサービスの佐藤業務部長は、「インターネットの掲示板やチャットなどで情報が収集できるため、組織的な盗難集団だけでなく、一般の人でも巧妙な手口で万引きを行っている」と、以前よりも万引きが複雑化していることを示唆する。

 NEBAの小林氏は、「やはり、万引きを防ぐには、店員がみえない場所でも抑制効果がある『万引き防止装置』を最大限に生かすことが重要だ」と強調する。(次週に続く)
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