店頭流通

個人向けPCリサイクル 回収実績、順調な滑り出し

2003/11/24 16:51

週刊BCN 2003年11月24日vol.1016掲載

 10月1日に個人向けパソコンリサイクル制度がスタートしてから、1か月半余りが過ぎた。そこで気になるのが回収制度の浸透状況だ。リサイクル推進に取り組む電子情報技術産業協会(JEITA)によれば、制度実施後1か月間のパソコン回収台数は7566台に上り、「まずは順調な滑り出し」となっている。一方、パソコン専門店および家電量販店ではパソコンの買取りビジネスを強化した。しかし、中古パソコンビジネスについては、「現段階では、パソコンリサイクルによる大きな相乗効果が出ているかどうかはわからない」と、慎重な声が多い。

中古ビジネスへの効果は微妙

 パソコンの回収・再資源化に向けたJEITAの「パソコン3R推進事業」に参加しているメーカーは、11月上旬の時点で39社。そのうち、JEITAが構築した個人向けパソコンリサイクルの回収スキームを活用しているメーカーは31社。

 JEITAによると、10月1日の個人向けパソコンリサイクル開始後1か月間の回収台数は7566台になったという。1日あたりの平均回収台数は、第1週が41台、第2週が186台、第3週が420台、第4週が441台、第5週が526台。週を追うごとに平均回収台数が増えている。

 JEITAでは、主要メーカーへの調査を行い、各メーカーの受付台数を総数で1万3000台と推測している。受付台数と回収台数に差があるのは、リサイクルの申込み受付から、実際の回収までにタイムラグがあるため。各メーカーは、ユーザーからの回収の申込みに対し、回収再資源料金の支払いを確認後、実際に回収を行っている。

 リサイクル回収が順当に浸透したのは、JEITAが周知活動に力を入れたことが大きい。これにより、東京都など自治体の協力体制も得られた。JEITAでは、今後も他の自治体にも回収スキームに協力してもらうよう働きかけていく。「ゴミ収集」としてパソコンを処分する環境をなくしていくことが回収制度を定着させるうえで重要だ。

 一方、多くのパソコンショップはリサイクル制度にともない、中古ビジネスを強化した。リサイクルの仕組みを説明しながら買取り提案を行うといった接客や、チラシの配布、ショップのサイトで査定額を出すサービスなどを行っている。

 しかし、実際の中古ビジネスにリサイクル制度が直接“追い風”になっているかどうかについては、ショップの反応は微妙だ。

 ピーシーデポコーポレーションの野島隆久社長は、「この10月は前年同月と比較して2倍近い買取り台数だった」と自信をみせるものの、「中古パソコンの販売拡大にリサイクル制度が影響しているわけではない」と話す。

 同社はこのほど、再商品化できないパソコン以外は、最低でも100円で買取る「最低100円買取保証制度」を導入。「廃棄料金がかかるなら買取ってもらう」というユーザーが増えているものの、買取りに出されるパソコンは古い製品が多く、単価が低いため、数多く仕入れなければ売上増につながらないという。

 ソフマップでも、「買取り台数は、10%増まではいかないが、前年同月を上回っている」とはいえ、「リサイクル導入前でも前年同月を上回る水準で推移していたため、買取りビジネスにリサイクルの影響が出ているのかどうかは、現段階では分からない」(広報担当者)としている。

 オーエー・システム・プラザでも、「中古ビジネスは伸びているが、前年同月と比べ10月のパソコン買取り台数は目立って増えてはいない」(田中智幸・大阪日本橋地区統括兼大阪本店長)と話す。

 量販店向けにパソコンの買取りシステムを提供する中古パソコン卸会社、サイクルヒットでは、「リサイクル制度が始まっても、量販店でのパソコン買取り台数は増えていない状況」(岩瀬勝一社長)と肩を落とす。

 リサイクル制度の実施前は、多くのショップで「中古パソコン市場が拡大する」という期待は高かった。だが、蓋を開けてみると、パソコンリサイクル制度自体は順調だが、中古パソコンの市場拡大効果が現れるまでには、現段階で至っていないようだ。
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