時の人

<インタビュー・時の人>日本エイサー 代表取締役社長 ボブ・セン

2011/01/13 18:44

週刊BCN 2011年01月10日vol.1365掲載

 日本エイサーは、2010年12月15日、タッチタブレットPC「ICONIA(アイコニア)」を発表した。発表会でボブ・セン社長は、10年のPC市場について「いまひとつ元気が足りなかった」とコメント。デスクトップを中心に好調だった印象がある10年の市場で、なぜそう感じたのか。2010年を振り返っての課題と、11年の戦略を聞いた。(取材・文/武井美野里)

ブランドが日本市場に浸透
コストパフォーマンスと提案型製品で攻める

Q. 「ICONIA」の発表会で、2010年のPC市場について「元気が足りなかった」とコメントしたが、その真意は?

A.
 薄型テレビなどの家電製品に比べると、はたしてPCは好調だったといえるのだろうか。09年が不調だったので、それと比較してよくみえるだけのように思える。話題を集めたアップルのiPad以外は、新しいカテゴリの商品が出てこなかった。当社も主力商品のA4ノートPCに年間を通して注力したが、これといったヒット商品は出せていない。PC市場は、2010年、最悪の時期からは脱却したとは思うが、もう少し元気があってもよかったと感じている。


Q. 2010年を振り返って、日本エイサーとして満足している点と課題として残った点は?

A.
 満足しているのは、「コストパフォーマンスのエイサー」という概念が日本市場に浸透したことだ。当社は世界で展開し、開発から製造まで一貫して行っているので、コストダウンや生産の高速化などのノウハウをもっている。また、適正価格をまず定めてから、製品の開発に取りかかっている。昨年は3D対応ノートPC「AS5745DG-A54E/L」を、10万円を切る実勢価格で発売した。最新技術を企業努力でリーズナブルに提供できることが、当社の強みだ。コストパフォーマンスの高さを日本市場でアピールできたことで、2010年、当社のPCは09年比で約20%、販売台数を伸ばすことができた。残念だったのは、ある会社が実施したカスタマー満足度調査の結果があまりよくなかったこと。07年にワールドワイドでeMachinesとゲートウェイを買収したが、まだカスタマーサービスのインフラが整理できていない。2011年はこれを早急に整える。

Q. 2011年のPC市場をどう読むか。また、前年の反省を踏まえて、11年はどのような戦略を練っているのか。

A.
 2010年はエコポイントがすべてだった。この制度が終了することで、2011年はさらにPCに注目が集まると考える。販売パートナーとも、今年、PCをどう盛り上げていくか、話し合っている。本当に好調になるのはこれからだ。前年に引き続いてA4ノートPCで日本市場でのシェアを拡大するほか、コストパフォーマンスが高く、革新的な提案型の製品を投入していきたい。2月以降に発売する「ICONIA」もその一つだ。また、ハードだけでなく、統一したユーザーインターフェースで、PCやスマートフォンなど、さまざまな機器でデジタルコンテンツを共有するホームネットワーク構想「Acer clear.fi(エイサー・クリアファイ)」などのクラウドの展開も視野に入れている。ワールドワイドでシェア2位のPCメーカーとして、高いコストパフォーマンスと提案型製品、そしてクラウドで、PC市場を形成する役割を担っていきたい。

・Turning Point

 「ターニングポイントは?」とたずねたら、「まだ到達していない」と、はにかみながら答えたセン社長。2003年に日本エイサー社長に就任し、ワールドワイドでも重要なマーケットの一つである日本を任された。社長就任後は、日本でのブランド認知向上に努め、08年のネットブックの盛り上がり以降、エイサーの名は徐々に日本市場に浸透してきている。2年前には、韓国マーケットでも責任者に就任。この二つの重要なアジアマーケットで成功を収めたとき、ボブ・セン社長はターニングポイントを迎えることになる。
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