デジタルトレンド“今読み先読み”

<福岡店頭市場>堅調に伸びる福岡の店頭販売 九州新幹線の開通で活性化

2011/05/19 18:44

週刊BCN 2011年05月16日vol.1382掲載

 家電量販店やPC専門店が集まる福岡市の博多・天神地区。今年3月、計画停電で困っている関東の親戚や知人に乾電池やバッテリなどを送ろうと店頭を訪れる人が増え、新生活需要と相まって、量販店の売り上げが伸びている。九州新幹線の開通や博多駅ビル「JR博多シティ」のオープンで来訪者が増え、活性化している福岡市の店頭市場を追った。

震災で落ち込むデジタル家電
九州・沖縄は微減にとどまる

 東日本大震災の翌週の3月14~20日、全国のPC・デジタル家電の店頭販売は大幅に減少した。BCNランキングでは、最も落ち込みが激しかった地域は直接被害を受けた北海道・東北地区で、前年同週の56.9%。大きな影響を受けた関東地区は61.5%で、全国平均でも82.1%だった。一方、福岡を中心とした九州・沖縄は前年同週の97.3%。減少はしたものの、東日本に比べると落ち込みの度合いは低い。しかも、3月21~27日には前年同週の103.1%ともち直した。


ベスト電器福岡本店は3月の売上高が前年を上回った
 この地域の家電量販店では堅調に販売が増えたようだ。福岡を本拠地とするベスト電器は、「地震による道路交通の寸断で、特定メーカーの製品が配送できなくなる事態になったが、大きく販売が減少するまでには至らなかった」(市村智樹・営業本部商品部長)という。売れた商品は、電池やバッテリ、懐中電灯などで、「関東に住んでいる親戚や友人・知人に送るために購入したのではないか」と分析している。

 加えて、新生活に向けて白物家電や薄型テレビ、PCなどの購入者が前年よりも増加。「関東では品薄との情報があったことから、4月から東京で暮らす人が福岡で購入するケースが多かった」という。この結果、3月は「前年実績と計画値をともにクリアした」という。

 博多駅前に店を構えるPC専門店、ドスパラ博多店では、「震災で一時的に厳しい状況になったが、3月全体では前年同月を上回った」(吉澤規宏副店長)。2月にインテルの第2世代Core i7/i5に対応する最新チップセットに不具合が生じて新製品の発売が大幅に延期になったものの、3月の出荷再開で、購入者が相次いだことが大きく貢献した。

 さらに博多店では、マザーボードとCPUをセットで2万円以上購入すると2000円割引になるキャンペーンを実施したことも、回復の要因の一つとなった。

九州全土からの来店客に期待
太陽光発電の拡販も

3月から来店者が急増しているドスパラ博多店
 福岡市は今、九州新幹線の全線開通に沸いている。3月3日に4代目の博多駅となる複合商業施設「JR博多シティ」がオープン。九州初進出となる博多阪急や、東急ハンズなどが入居する九州最大規模の駅ビルで、博多駅周辺は活性化が進む。

 「来店客が昨年より大幅に増えている」というドスパラ博多店では、「週末には、熊本から来られたお客様もいた」(吉澤副店長)と、九州全土からの来店に手応えを感じているようだ。一方、博多駅周辺から歩いても30分程度の距離にある天神地区は、「一大商業地として昔からのお客様を確保しているので、博多の活性化で販売が落ち込むことはない」(ベスト電器の市村商品部長)と自信が揺らぐことはない。

 ドスパラ博多店の吉澤副店長は、今年の夏に向けて「PCパーツ販売に加えて、スマートフォンの販売にも力を入れる」と、来店客の広がりを販売機会につなげていく。一方、ベスト電器では、「震災で消費電力を抑えなければならないという意識は、福岡の人々の間にもある。自分で電気をつくり出すという意味を込めて、太陽光発電システムなどによるオール電化を提案していく」(市村商品部長)として、ベテラン社員による専任部隊を組織した。

 九州新幹線の開通と博多駅の再開発で活性化する福岡。九州最大の商業ゾーンである博多・天神地区がさらに集客力を高めたことで、家電量販店やPC専門店の成長の可能性は高くなっている。(佐相彰彦)
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