輝かしい21世紀、その時代をリードするIT――のはずだった。しかし、現実は世界を覆うIT不況のなかで、2001年を終えようとしている。今年を振り返り、10大ニュースをまとめてみた。

1．電機大手の業績悪化　軒並み赤字決算へ
2．半導体事業を中心に大幅なリストラも実施

　この2テーマが物語るように、今年はIT不況という言葉で代表された1年だろう。

　米国のネットバブル崩壊に始まったIT不況は世界に波及、日本も深刻な影響を受けた。

　今回のIT不況の原因を考えてみると、いくつかの要因が複雑に絡み合っている。半導体、電子部品、通信、コンピュータ、家電と、複数業界が同時に不況の直撃を受けたが、これは過去にはなかったパターン。ハードウェアに偏重していた日本メーカーの傷を深くした。

　発端は、アメリカのネットバブル崩壊だった。ネット企業というだけで、巨額なベンチャー資金が流れ込んだが、利益を出せるビジネスモデルを確立できたところはごく少数だった。

　そうしたなか、景気後退懸念からベンチャーキャピタリストが資金供給を渋り出した途端に倒産企業が相次いだ。時価総額でいえば、130兆円が消えたともいわれる。

　この結果、米国のコンピュータメーカーは、売掛金の回収不能に陥り、巨額の赤字を余儀なくされた。

　日本は、ネット企業が未成熟なこともあり、この面ではそれほどの直撃は受けなかったと見られるが、ネットバブル崩壊は連鎖反応を呼び、半導体、通信、コンピュータに波及していった。

　半導体の場合、昨年の品不足から一転しての大不況突入だが、昨年の活況の波が大きすぎたことが傷を深くした。

　昨年は携帯電話の世界的な需要沸騰を背景に、半導体をはじめとした電子部品が極端な品不足に陥っていた。完成品メーカーは1日も早く必要部品を確保するため、数か月先から半年先までの確定注文を出すことで入手を早めようとした。

　明らかに仮想需要が発生していたわけだが、半導体、部品メーカーはその注文に見合った製造体制の確立を急いだ。そうした増産体制が整い始めたところに需要減退が表面化。日本メーカーが主力とするDRAMメモリは暴落し、価格は年初に比べ10分の1にまで落ち込んだ。メモリは、韓国に続いて台湾勢にも追い上げられており、第2の繊維という見方も現実味を帯びてきた。

　世界半導体市場統計によれば、世界の半導体市場規模は、00年は対前年比37％増で25兆円に達したが、今年は同32％減の17兆円になるだろうと予測している。

　通信業界では、ネットバブルの崩壊と似たパターンが目立つ。

　アメリカは96年の通信法改正で自由化を実施。猫も杓子も資金さえあれば通信事業に参入できる体制をつくった。その結果、新興の通信事業者が多数名乗りを上げたが、企業基盤は弱体のままだった。

　ネットバブルの崩壊でこうした通信事業者にも疑惑の目がおよび、キャピタリストが資金供給を絞り始めると、破綻する企業が続出した。

　パソコンは、先進国における需要一巡と、不況感の高まりによる買い控えなどにより、伸び率が鈍化した。世界のパソコン需要は00年には1億3000万台（対前年比16％増）だったが、01年は同9％減の1億2000万台にとどまると見られている（野村証券調べ）。

3．コンピュータ各社、ハードからサービス重視へ

　深刻な不況が続くなか、IT業界では「ハードからサービスへ」という動きが1つの合い言葉になった。

　いち早くサービス重視に転じていたIBMがほとんど無傷でこの不況を乗り切ろうとしていることが刺激となった。

　また、ハードウェアについては、韓国、台湾に続いて中国も台頭しようとしており、メモリ、液晶などハイテク技術の華である製品も含めて、長期に渡る低価格競争は避けられなくなっていることも大きい。

　どこに利益の源泉を求めるのか、リストラという後ろ向きの対策でなく、新たな成長戦略の早急な策定が求められている。

4．e-Japan戦略本格始動5年内に先端IT国家目指す

　今年1月6日に「IT基本法」、正式には「高度情報通信ネットワーク社会形成基本法」が施行された。政府はこれを受け、5年以内にIT先進国になるとの「e-Japan戦略」を策定、01年度には具体的な予算措置も講じられ、国を挙げての動きが本格化した。

　具体的な目標としては、（1）世界最高水準の高度情報通信ネットワークの形成、（2）教育および学習の振興並びに人材の育成、（3）電子商取引等の促進、（4）行政の情報化および公共分野における情報通信技術の活用の推進、（5）高度情報通信ネットワークの安全性および信頼性の確保――におかれ、関連法改正などは順調に伸展している。

5．ADSLの本格普及始まるブロードバンド時代へ

　e-Japan戦略のなかで重点項目の1つが、ブロードバンド時代への移行だったが、今年に入ってADSLのインフラづくりが急進展。11月には加入者が100万人を突破した。草分け的ベンダーだった東京めたりっく通信は破綻したが、ヤフーBBが打ち出した下り8Mbpsで2980円という衝撃的な価格設定は業界に大きな影響を与え、今では各社がこの価格を下回る努力を始めている。月間30万人前後の加入者増ベースは当分続くと見られる。

6．ブロードバンド対応のウィンドウズXP日本上陸

　パソコン業界活性化の期待を担って、ウィンドウズXP日本語パッケージ版が11月16日に発売された。ブロードバンド化にともなう常時接続時代に最適のOSとの評価は高い。この1年でハードウェアは、クロック周波数、メモリ容量、ハードディスク容量など大きく進化。補助記憶装置もCD-ROM、フロッピーディスクが消え、CD-R/RW、DVD-ROMが主流となるなど大きく変貌した。それに通信環境もブロードバンド化が進みつつあるわけだが、こうした環境を生かせるOSがウィンドウズXPだといえる。

　XPのパッケージ版発売は、ウィンドウズ95や98の発売時と同様、カウントダウンによる深夜発売が行われた。

　東京は秋葉原と有楽町、新宿、名古屋は大須、大阪は日本橋と、主だった電気街での深夜発売となったが、かつての深夜発売時のような盛り上がりにはならなかった。

7．変貌するパソコン流通大型旗艦店が相次ぎ登場

　6月、旧・有楽町そごうビルに「ビックピーカン」がオープン。11月にはヨドバシカメラが大阪・梅田駅前に大規模店舗をオープン。さらに同月末、エイデン・デオデオ連合に上新電機、ミドリ電化が参画すると発表した。

　「ビックピーカン」のオープン初日（6月14日）には、あいにくの雨にもかかわらず、40万人（ビックカメラ広報）もの来客を集めた。大阪駅前に出店した「ヨドバシカメラマルチメディア梅田」は、地下2階・地上13階建ての巨大店舗。11月22日の開店時には2000人もの客が行列をつくった。

　全国展開をはかり、攻勢を続けるカメラ量販店と、それに対抗する形で生き残りを模索する家電量販店というのが一応の図式だが、パソコンのライフサイクルを見通しながら、生き残り策を巡る戦いは熾烈さを増さざるを得ないだろう。

8．悪質ウイルス猛威振るう総合セキュリティ時代に

　7月から連続して登場した新型ウイルス「コードレッド」、「サーカム」、「ニムダ」は、世界中のコンピュータを危機に陥れた。セキュリティベンダーや治安当局は被害拡大を防ぐため、対応に奔走。一連の“パニック”は、昔のスタンドアロン型のコンピュータ環境ならば起こり得なかった事態だ。

　今日のようにパソコンがネットワークで結ばれ、インターネットへの常時接続が一般化している環境下では、起こるべくして起こったといえる。今回の脅威は総合セキュリティの重要性を痛感させ、対策手段が新局面を迎えつつあることを印象付けた。

9．パソコン業界再編の兆しゲートウェイ日本撤退

　8月にゲートウェイが日本市場からの撤退を発表した。HPとコンパックコンピュータの合併構想も表面化、業界再編が動き出した。

　単一商品は、成熟化段階に入るとある程度のシェアをもっていないメーカーは生き残れなくなる。今後、世界規模での合従連衡は避けられないだろう。

10．家庭用ゲーム機業界に新旧交代の流れ

　3月末に来日した米マイクロソフトのビル・ゲイツ会長は、ゲーム機市場参入への戦略商品「Xbox」をお披露目し、同市場にかける並々ならぬ意欲を示した。

　Xboxは米国ではすでに発売されており、好調な売れ行きを示している。日本国内発売は02年2月の予定。

　一方、任天堂は9月、「ゲームキューブ」の販売をスタートし、新型モデルで先行するソニー・コンピュータエンタテインメント（SCEI）の追撃を開始。

　迎え撃つSCEIはNTTグループとの連携姿勢を強め、ゲーム機のネットワーク戦略を加速し始める状況となった。

　3社による三つ巴の競争が加速するなかで、かつて同業界で一世を風靡したセガは3月、家庭向けゲーム機ハード事業からの撤退に追い込まれ、新旧交代の流れを印象づけた。