「NAS（ネットワーク・アタッチト・ストレージ）」は、ハードディスクとネットワークインターフェイス、OS、管理用ユーティリティなどを一体化した単機能サーバーだ。ネットワークに接続したクライアントパソコンからは、通常のファイルサーバーと同様、共有ディスクとして使用することができる。

　ファイルシステムやネットワーク通信機能を内蔵しているため、システムへの導入や追加、異なる種類の複数サーバーからデータを共有することも可能だ。

　メリットは、PCサーバーに比べ、セットアップや管理・運用が容易なこと。例えば、PCサーバーのディスク容量が足りなくなった場合、NASを追加した方が手間が省ける。

　最近では、各メーカーが低価格のNAS製品を発表している。そのため、徐々にではあるが、中小企業やSOHO、コンシューマなどによるNASの導入が増えている。

　アイ・オー・データ機器では、NAS関連製品として「ET－NAS60G」（価格12万円）と「HDA－i80G／LAN」（同4万9800円）を商品化した。

　「ET－NAS60G」については、企業の部門利用を中心とした販売で、1か月に平均200台前後の販売台数になるという。

　「HDA－i80G／LAN」では、「販売台数は1か月平均で3000台に上る。低価格という点で、外付けハードディスクの置き換えとしてSOHOやコンシューマに人気がある」（第2開発部開発5課・西島久尚課長）としている。

　ロジテックの広報販促部広報販促課・六波羅恵技術担当係長は、「専任のシステム管理者がいないSOHOや企業内の各部門では、トラブルが発生した時のことを考えると、NAS製品を導入した方が効果的」と強調する。

　同社では、ボックス型シングルドライブのNAS製品「LAS－TN」シリーズを2002年1月に発売。40GBタイプで11万8000円、80GBタイプで13万8000円の低価格を実現した。保守面では、3年間の部品保証に加え、1年間のオンサイト保守が標準で添付されており、別売りで5年間のオンサイトパックも用意している。

　同社はNAS関連製品の販売にあたり、昨年10月に「NAS・RAID」の開発から保守・サポートまでを手がける専門部隊を新設した。

　「1月からの発売とあって、01年度はNAS関連ビジネスの基盤づくりに徹してきたが、この間、需要の手応えを感じていた。02年度からは本格的に販売が拡大していくだろう」（六波羅技術担当係長）と期待している。

　丸紅インフォテックでも、「企業内のそれぞれの部門ごとでのニーズがある」（コーポレート営業推進部・神門勝彦部長）としている。

　販売については、「顧客企業のネットワーク環境を理解することと、販社へのトレーニングがカギになる。とくに、中小企業やSOHOへの販売は、ターゲット企業の情報をつかむことが重要になってくる」（神門部長）と分析する。

　同社では、02年度にNAS製品で1か月平均500台の販売台数を見込んでいる。

　今後のNAS市場に関して、アイ・オー・データ機器の西島課長は、「LANが身近になり、外付けハードディスクの置き換えとしてNAS製品を購入するコンシューマが増えるだろう。将来的には、外付けストレージがNASの方向に進むのではないか」と見ており、「ET－NAS60G」で1か月平均400台、「HDA－i80G／LAN」で月4000台の販売台数を見込む。

　ロジテックの六波羅技術担当係長は、「これまでLAN製品はパワーユーザーのみだったが、最近は一般ユーザーも購入するようになった。ブロードバンドの普及にともない、NAS製品の販売も加速する。今後は、小規模なオフィスやコンシューマなどにも需要があるのではないか」と分析しており、売上規模としても「NAS関連ビジネスで10億円を目指す」と意気込みを見せる。

　丸紅インフォテックでも、「中小企業やSOHOでの導入率は確実に高くなる」（神門部長）とNAS市場のブレイクに期待を寄せる。

　低価格のNAS製品は、新しい需要が開拓できる商材に成長し、新規顧客を獲得する可能性を秘めているのではないだろうか。（佐相彰彦●取材／文）