世界に出ていこう

　メルコに続いて、エレコムも輸出戦略を本格化させた。内弁慶揃いだった周辺機器、サプライ業界で、このような動きが生まれたことを高く評価したい。ぜひ、成功させて欲しいものだ。日本のマーケットサイズは世界市場の8％足らずというのが通説である。今は、経済規模が縮んでいるのでもっと小さいかもしれない。この8％圏内だけでシェアの奪い合いをやっている限り、大きな成長はおぼつかない。とくにパソコンに成長の限界が見え始めている現在、事業を成長させようと思ったら海外に出ていくしかない。それは百も承知で、その勇気がもてなかったというのが大方のメーカーなのであろう。

　メルコの場合、海外事業はまだ赤字だというが、牧誠社長は不退転の決意で取り組んでいるので、いつかは成功させるだろう。エレコムの場合、事業が動き出すのはこれからだが、きっかけが英国の小売りチェーン店からの働きかけにあったという話は印象深い。日本で売れる商品なら、世界に出て行ける。そのことを実証してもらいたいものだ。品質に最も厳しいユーザーが多いのは日本だというのは通説である。その日本で鍛えられた結果、家電やカメラ、事務機などの輸出産業が育った。そうした産業でも、先達が苦労しながら市場を開拓。それを見て我も我もと海外へ進出していった。

　IT不況の中で、元気なのはキヤノンやリコーだったが、ある程度寡占化体制に移行していることと同時に、海外市場をもっていたからこそ不況の影響を軽微に切り抜けられたのも明らかである。残念ながら、パソコン本体でこれから海外で大きく飛躍するのは難しいかもしれない。実績をもち、執念深くアタックし続けているのは東芝くらいだからだが、周辺機器やサプライは大きな可能性をもっているだろう。日本の周辺機器ビジネスというのは、かつてはかなり特異なビジネス形態だった。工場をもたず、主要な部品は他社から買ってきて組み立てるだけというのは、伝統的な製造業者から見れば異端者だった。

　しかし、このファンドリーという生産形態は、今では最先端のビジネスモデルに変身した。コア技術をもたないという点も、必ずしも弱点ではなくなりつつある。最終的にエンドユーザーが求める商品にまとめ上げる力は、周辺機器メーカーにしろサプライメーカーにしろ、相当のノウハウを貯めたように見える。たとえば、記録型DVDでエンジンは買ってきているのに、当のエンジンメーカーよりも高いシェアを獲れるというあたりに、この辺の事情が垣間見える。

　ブランドを確立し、店頭の棚をもっているからという要素はあるにしろ、それだけだったら長続きするはずがない。多分、エンドユーザーに受け入れられる蕫ものづくり﨟の能力については、有力周辺機器メーカー、サプライメーカーは世界に通用するものをもっているだろう。実際に製造するのは、台湾や中国の企業だろうが、品質検査さえしっかりしていれば問題ない。後は、販売ルートの確立とブランドの確立だが、多少時間がかかっても、多くの業界で実現してきたことだ。メルコが成功したら、エレコムが成功したら、などと考え、手をこまねいて見ているだけでは後れを取ることになる。8％経済圏から世界に出ていこう。それしか、日本企業が生き残る道はない。（石井成樹●取材・文）