日立製作所（庄山悦彦社長）はこのほど、国内で初めてウェブログ（通称・ブログ）の企業版「BOXER BLOG powered by TypePad（BOXERブログ）」を販売開始した。ブログの特徴である「トラックバック機能」などを生かし、企業が社外に対し効率良く情報発信したり、eコマース（電子商取引）などを簡単に行えるツールとして中堅・中小企業、SOHOなどに拡販していく。同社以外のハードウェアベンダーなども参入を計画しており、米国で普及が進む「企業向けブログ」は今後、日本でも拡大しそうだ。

中堅・中小企業のeコマースで利用

■企業から効果的に情報発信

　「BOXERブログ」は、ブログソフトの先駆者である米シックス・アパートのブログサービス「TypePad」のOEM（相手先ブランドによる生産）供給を受け、日本の中堅・中小企業、SOHO向けにASP（アプリケーションサービスプロバイダ）型サービスとして開発された。

　画面デザインなどのテンプレート（ひな形）が用意されたウェブ構築ツール（CMS）があり、HTMLで組んでいくのに比べ、初心者でも簡単にウェブの作成が可能で、更新情報の公開を効率化できるのが特徴。一般的に普及している企業のホームページに必要な構築や運用などにかかる費用に比べ、低価格で手間がかからない。

　日立製作所では、BOXERブログを「ブログの『トラックバック機能』や、ウェブの更新情報を広範囲に公開する『RSS機能』などの特徴を有効利用した、効果的に企業の情報発信・交換ができる安価なツール」（小川浩・ブロードバンドサービス本部BOXER GROUPコラボレーションウェア設計部長代理）として、今年度（2005年3月期）内に1000社程度への販売を目指す。

　ブログは、企業や個人ユーザーのブログに掲載した内容と同等の内容をもつ他社や個人ユーザーのブログを認識し、情報の要約をリンクしたい旨を通知できるなどの仕組みをもつ。

　日本では、日記代わりに利用したり、企業の業務に必要な情報獲得ツールとして使うユーザーが多い。汎用的な検索エンジンにも発見されやすいという特徴もある。日立製作所では、自動的に他のウェブにリンクが張られるトラックバック機能などをもつブログが、企業の情報発信や将来的にはeコマース、マーケティングのツールとして応用でき、普及すると見込む。

　例えば、企業の広報資料やニュースリリースをBOXERブログで掲載すると、RSS機能などで関連する国内外のブログに更新情報が通知される。一般的な企業のホームページでは、情報の閲覧者をサイトに呼び込むことに苦労していたが、ブログの場合、特に手を加えずとも広範囲に情報が伝達できる。さらに、商品を販売するeコマースサイトをもつ企業ならば、同サイトとBOXERブログを連動させる仕組みを作り、顧客を効率良く呼び込み購買に結びつける手段としても使える。

■ナレッジ共有ツールとしても

　最近では、国内でeコマースのポータルサイトを運営するブロバイダが、ブログを購買に利用し始めている。書籍・CDなどをウェブ販売するアマゾン・ジャパンでは、個人ユーザーが自分のブログで本の紹介文を書きアマゾンのサイトへリンクを張り、そこに集まるブログの個人ユーザーがアマゾンのサイトで本を購入した場合、紹介文を載せた個人ユーザーに対し購入費の数％をキックバックするサービスを行っている。

　アマゾン・ジャパンのようにブログを購買利用で検討するeコマースサイトが増えており、自社の商品をeコマースのポータルサイトに掲載し、自社のブログから顧客をポータルサイトに飛ばす方法がさらに広がる可能性がありそうだ。eコマースサイトを構築する予算と技術力に乏しい企業であっても、ブログにより早期にウェブ購買を始められる。

　日立製作所では、企業内での利用にも期待を寄せる。部署やプロジェクト別にBOXERブログを構築し、営業日報などを掲載。これにより、営業先などの情報が一度に集まり、「電子会議室」として部署間のナレッジ（知識情報）を共有できると見る。同社は、BOXERブログと既存グループウェア「BOXER／G3」との親和性をもたせており、両製品のパック販売も行っている。

　BOXERブログの申込みを開始した5月17日以来、学校や大学など教育機関を中心に、中堅・中小企業や大企業からも計150件以上の依頼がきた。同社によると、ブログは世界に数100万以上存在するという。米国では、「商用のナビゲーションとしてブログ利用が企業に広く浸透している」（小川部長代理）とし、日本でも拡大すると予想している。