CCCD廃止と音楽配信事業

　成長著しい携帯オーディオプレイヤー市場。アップルコンピュータの「iPod」がけん引役となり、今や家電量販店が特設コーナーを設けるほどの人気だ。そのブームに、さらに拍車をかける要素が出てきた。コピーコントロールCD（CCCD）の廃止と、音楽配信サービスの台頭だ。

　CCCDは、コピー禁止機能を付加したCDで、著作権保護を目的に、2002年3月にエイベックスが初めて導入。その後、ソニー・ミュージックエンタテインメント（SME）が02年11月に採用を開始し、他のレコード会社も追随していた。

　CCCDは、基本的にパソコンのハードディスク（HDD）に楽曲を取り込むことができないため、携帯オーディオプレイヤーに転送することができない。携帯オーディオプレイヤーのユーザーは、CCCDの楽曲を携帯オーディオプレイヤーで聞くことができない、というわけだ。

　ところが、エイベックスやSMEなど大手レコード会社が、全面的にCCCDを廃止することを打ち出した。「導入後約2年で、著作権保護に関する意識レベルが高まり、一定の成果を上げた」（SME）と、廃止の理由を説明している。

　この動きを携帯オーディオ機器メーカー側はどう見ているのか。98年から携帯オーディオプレイヤーを販売するクリエイティブメディアでは、「（CCCDの廃止は）プラス材料になる」（マーケティングコミュニケーションの樋原睦寛氏）とCCCD廃止に諸手を挙げて賛成の様子。アップルコンピュータの小西達矢・プロダクトマーケティングiPod／Music Application担当課長は、「CCCD廃止の傾向は、少なくともiPodを筆頭とした携帯オーディオプレイヤーが普及した証拠だ」と説明。そのうえで、「パソコンを介する携帯オーディオプレイヤーが主流となりつつある状況で、CCCDを導入し続けることは、消費者にも音楽業界にもメリットは少ない」と、CCCD廃止を歓迎している。

　一方、もう1つの要素として見逃せないのが、音楽配信サービスの成長だ。

　マイクロソフトが10月下旬、音楽配信事業に参入するとともに、コンテンツ配信サービ機能を強化した音楽・映像再生ソフト「ウィンドウズメディアプレイヤー10」の提供を開始。同ソフトで、オンライン音楽配信サービス提供企業11社のコンテンツを購入できるようにした。このほか、今年に入って音楽配信事業を始める企業は急速に増え、オリコンも来年1月からのサービス開始を表明している。

　00年から音楽配信サービスを手がけるレーベルゲートは、音楽ファイルのダウンロード数が前年同月比約2・5倍で推移するほど好調。音楽配信に対し二の足を踏んでいたレコード会社から配信依頼が増加、楽曲数が昨年末に比べ約10倍の8万曲に増えたことが要因だ。

　同社の長嶺徹・プロモーション・チーム係長は、「マイクロソフトの参入は相乗効果を生むし、レコード会社が乗り気になってきたことも大きい。今年、音楽配信サービスが一気に普及した」。クリエイティブメディアの樋原氏は、「複数の企業が参入したことで、音楽配信という新たなサービスがユーザーに根付く。自然と携帯オーディオプレイヤーの販売にも弾みがつく」と予測する。

　CCCDの廃止による著作権侵害と、音楽配信事業者により音楽ファイルの圧縮方式が違うため再生できないプレイヤーがあるといった問題は残る。だが、この2つの要素は、少なくとも市場を活性化させる追い風になりそうだ。(木村剛士●取材／文)