1999年の米ネットショップでのクリスマス商戦は、その過熱ぶりが徒になり、多くのeコマース企業を破綻させた。そのネットショップも往来型の企業が主流となっていたが、大統領選挙を迎えた今年、改めてネットショップ同士の争いが加熱しそうな雲行きである。今年の勝者はどこになるのであろうか。

　米国では毎年11月下旬の感謝祭からクリスマス・新年までの間が長いホリデーシーズンとなる。前クリントン大統領が感謝祭の2日後に、自身のクリスマスプレゼントの調達をインターネット経由で行うと声明を出したことで、ネット商戦に火を付けITバブルの最盛期を演出したのは1999年のことだった。

　この年、各ネットショップは、不安定なダイアルアップ回線による注文の混乱や、人気商品に注文が集中したことによる品不足によるクレーム、更には発送や梱包などの不手際による返品など多くの問題を抱え、消費者の信頼を一気に失ってしまった。

　その結果、直前の莫大な投資が回収できずに事業が行き詰まったイートイズを始め、多くの倒産劇がeコマース各社に襲いかかり、これがきっかけとなりITバブルの終焉を迎えたことは記憶に新しい。

　そして5年後の今年。ブロードバンドが普及し、一般のユーザーによるネットショップでの購買経験も増え、より安定したネットショップ経営が可能となった。その結果、再びインターネット上でのクリスマス商戦が再燃しようとしている。

　現在ではネットショップの中心はかつてのeコマース専業各社ではなく、クリックアンドモルタル型と呼ばれる既存大手のネットショップに移行している。長年の経験から商売の各種ノウハウを備えた既存の大手小売業者は、改めてインターネット市場での覇権を目指すべく着々と準備を進め、一方eコマース組の大手、アマゾンやイーベイなどもその品揃えと知名度を武器に顧客の確保に努めている。

　商品別で見た場合、今年のクリスマスプレゼント商戦の台風の目はアップルコンピュータのiPodだ。米調査会社のパイパージャフェリー社の調べでは、全米の高校生の間ではクリスマスプレゼントとして欲しいもののリストのなかで、iPodはダントツで1位だったということだ。

　アップルコンピュータは、好調を維持するiPodの売り上げを受け、04年度第4四半期の売り上げ予測を28億9000万ドルに上方修正した。モデルチェンジをしたばかりのiMacや、ようやく生産が追いつき始めたG5などとも併せ、IT分野ではアップルコンピュータの動向が今年のクリスマス商戦の中心になることは否めないようだ。

　対抗する各社も静観しているわけではない。CEA（全米家電協会）の調査では、今年の主力は大画面のプラズマディスプレイということで、近年売り上げが低迷するソニーも液晶テレビを中心とした家庭用AV（音響・映像）機器類に期待をかけているという。

　ソニー以外にもサムスン電子やシャープといったメーカーがこれらの商品に注力する構えだ。他のIT機器としては、やはりMP3プレイヤーやノートパソコンに人気が集まっている。

　もっとも、各種のチップを提供し売り上げが期待できるはずのインテルは、過剰在庫を抱えていることもあって新たな増産体制は敷かず、その為売り上げも例年ほどには期待できないとしている。ゲーム機器業界も競争は激しく、任天堂は新型携帯ゲーム機器「任天堂DS」をクリスマス前には発売する予定で、既に予約を受け付けるサイトも出現した。

　今年のクリスマス商戦は活発になることが予想されており、CEAによれば04年のホリデーシーズンにおけるIT分野の商品の売り上げ予測は1088億ドルを超えると見られている。これは去年の1000億ドル強の数字に比べ9％弱の伸びということになる。通常であれば旅行や外食などに使うはずの予算が、インターネットでの商品購買に費やされることによる増加分だとして、好調な売り上げが期待されている。（田中秀憲）