戸惑い見せる関西系電機3社

　関西経済復権の曙光と見えたデジタル家電。2004年度の9月中間決算をみる限り、関西系電機メーカーの業績には、旭日の勢いがある。しかし、今後については、やや異なる展開を予想する向きもある。

　「05年度は問題なく業績を伸ばせるが、06年度半ばには次の商品が欲しい。逆算すると、来春には判断を下さねばならない。先送りはないが…」

　中間期としては過去最高益を記録した04年度9月中間決算の発表会見の席上、記者団に囲まれたシャープの町田勝彦社長の口から出た言葉は、意外な内容だった。話題の的は、大型液晶テレビを生産する三重・亀山工場の第2工場の着工について。アテネ五輪が開催されたこともあり、シャープの液晶テレビは、今年度上期に販売台数ベース・販売金額ベースとも前年同期の1・9倍を記録した。しかし、販売価格下落は進行。シャープでは、30型以上の比率が高まり、1台あたりの単価こそ上昇したが、台数ベースでは通期の見通しを300万台から270万台に下方修正した。こうしたこともあってか、液晶戦略の次の一手と目される亀山第2工場の着工について、町田社長の言葉に微妙な揺らぎが感じられた。

　大型化戦略で利益率を維持するには、次には40型以上の主力商品が必要。当然、現在の第6世代から第7、第8世代のマザーガラスに移行する必要がある。しかし、需要がついてくるか、という疑問が残る。実際、町田社長も「社内には、第6世代の第1工場を強化すべき、との声もある」と指摘する。新工場建設には、何らかの技術的なブレークスルーがなければ意味がない、という町田社長だが、06年度半ばに向けた商品開発というテーマともからみ、ぎりぎりの経営判断を迫られている様子には「液晶テレビ独り勝ち」という枕詞はそぐわない。

　松下電器産業も中村夫社長の口からは、「上期は満足すべき以上の数字が出た」という言葉が聞かれ、プラズマテレビやDVDレコーダーの新製品投入で「オリンピック商戦に圧勝した」（川上徹也専務）という言葉ほどには威勢よくない。映像・音響機器の売り上げは前年同期を9％上回り、プラズマテレビだけを見ると前年同期2倍の1000億円になった。しかし、現在建設中のPDP尼崎新工場には、950億円の投資が必要。中村社長は「プラズマテレビの将来は明るく、自信がなければ尼崎に投資はしない」というが、全商品部門の連結ベースの売上高は、松下電工・パナホームを除けば前年同期実績を下回っている。これまでプラズマテレビの優位性をことさらに強調しなかった同社が、好調を前面に押し出すのには、やはり違和感を覚える。

　この背景には、期待のデジタル家電の価格下落が加速し、市場拡大ペースにも懸念が出始めていることがあるようだ。すでにそれを示す事例もある。三洋電機の中間業績は、売上高こそ前年同期を上回ったものの、利益は大きく落ち込んだ。原材料の値上がりなどが原因だが、急成長したデジタルカメラにブレーキがかかったことも大きい。OEM（相手先ブランドによる生産）を含めれば国内トップメーカーとして注力してきたが、かえってあだになった。他社に対し優位性をもつ分野を重点強化してきた点では、シャープや松下電器と変わりない。

　シャープ、松下電器は、年末以降に揃って中国での液晶・プラズマテレビ事業を拡充する。もしも、国内市場の変調への対応であるなら、関西のみならず、日本経済にとっても由々しき事態と考えねばならない。(山本雅則（大阪駐在）●取材／文)