中国では、次世代DVD規格をめぐって、独自に知的財産権を所有するEVD、HDV、HVDの三規格が鼎立、一時は泥沼化の様相を呈していた。それがようやく9月末になって、EVDが次世代DVDの国家標準認定を受ける方向で動き始めた。一方、従来のDVDは消費者の信頼も高い。今後、中国のDVD産業はどうなっていくのだろうか。

　今年1月のEVD登場に際し、上海新秦信息諮詢有限公司（上海サーチナ）が行ったEVD購入に関する調査（有効回答件数5000、調査期間2003年12月26日－04年1月19日）では、「次はEVDを購入したい」という回答は9％程度という結果であった。

　一方、「従来のDVDを購入したい」との回答が全体の約4割。EVD購入をためらう理由は、「今後に不安」が約4割を占めていた。

　03年末から04年始めの時点では、すでに確固たる市場基盤を築いているDVDに対する消費者の信頼が厚く、人気も高かったといえる。

　それから約半年後、上海サーチナは、耐久消費財に関する意識調査（有効回答件数5000、調査期間04年9月10－15日）を行った。

　調査内容は、過去半年間における家具類やAV（音響・映像）機器、通信機器、家電の購入状況と今後半年間の購入予定。その結果、過去半年間に新規購入した家電製品のトップ5は、テレビ（19.8％）、DVDプレイヤー（18.4％）、電子レンジ（16.7％）、冷蔵庫（15.2％）、温水器（14.5％）。

　今後半年間に新規購入する予定とした回答は、トップのビデオカメラ（13.6％）に続いて、テレビ（11.5％）とDVDプレイヤー（10.4％）となった。

　このように、依然としてDVDの高い人気が示される一方で、「国慶節（建国記念日）」にはじまる「十一」商戦から、EVDによるDVDシェア蚕食が本格化し始めたとの情報もある。

　EVDは、認知不足や国家標準規格をめぐる争いが混迷を極めたこともあり、消費者の困惑を招いて不調が続いていた。しかし9月末のテスト通過直後、「十一」商戦を機に、値下げで一気に攻勢へ転じた。

　値下げ後の価格は988元。販売開始時点で1998元だったことを考えると、かなりの値下げ幅である。その甲斐あってか、1日に数台しか売れなかったという「五一（メーデー）」連休の10倍を販売したと伝えられている。

　EVDは赤色レーザーを使用している。HD DVDやブルーレイディスクといった青色レーザーの次世代DVDが、今後3－5年で中国に進出してくるとされており、EVDメーカーはそれまでに必死の販売を行うとみられる。

　こうしたなかで、果たしてDVDは今後市場競争を勝ち残っていくことができるのだろうか。

　そもそも中国がEVDを開発したのは、03年からDVD関連特許使用料の支払いが義務付けられたためである。世界のDVD機器の大部分を生産していることがたたり、中国は世界最大のDVD関連特許使用料支払い国となってしまった。そこで、自国が知的財産権を所有する製品に活路を求めたのだ。

　とはいえ、米国の市場調査会社であるグローバルソーシズ社の調査結果によると、04年に入ってからこれまでに、中国大陸で少なくとも8700万台のDVDプレイヤーが製造されており、現時点では大量生産が続く。

　このように、肝心の特許使用料はいまだに多額を支払い続け、国内市場はEVDに蚕食され始めている。DVD産業はなんとも皮肉な現実に直面しているのである。（サーチナ・中村彩）