ユーザーの信頼回復が先決

　米ゲートウェイが「ゲートウェイ」ブランドのパソコンを12月2日から日本市場で販売開始した。同社は2001年8月、米国市場での業績落ち込みを理由に日本市場から撤退しており、ゲートウェイブランドでは3年振りに日本市場への再参入になる。果たしてシェア拡大を図れるのであろうか。

　撤退前と大きく異なっている点は、10万円以下の低価格パソコンを販売する米イーマシーンズを買収し傘下に収めたこと。米イーマシーンズ社長兼CEOだったウェイン・イノウエ氏がゲートウェイの社長兼CEOに就任。米国市場でのビジネスが回復傾向に向かい、再びワールドワイドでのシェア拡大を図るため、イーマシーンズブランドの販売が好調な日本市場での再参入に踏み切った。

　イノウエ社長兼CEOは、「日本市場では、すでにイーマシーンズで参入している」と、日本市場の現状を把握していることを強調。「（日本市場は）合理的なユーザーが多く、ゲートウェイ製品に魅力を感じるだろう」と語ると同時に、「バリューを提供できる」と自信を示す。

　イノウエ社長兼CEOが絶対の自信をみせているのは、メーカーサポートを強化した点にある。大阪府と秋田県の2か所にテクニカルサポートセンターを設置し、24時間365日無休の電話サポート体制を敷いた。サポート品質の面では、1回目の電話で確実に問題を解決するようにしたほか、電子メールやチャットでの問い合わせも可能。待ち時間が少なく、ユーザーはストレスなくパソコンについて気軽に問い合わせることができるという。さらに、撤退前にも取り組んでいた部品単位の交換が可能なサービスを提供し、撤退以前のユーザーのサポートも受け付けるなど至れり尽くせり。

　販売に関しては、直営店による直接販売だった前回とは違い、パソコン専門店および家電量販店による小売店ルートを活用する。石丸電気と上新電機、九十九電機、ノジマといったイーマシーンズブランドを販売している4社とはゲートウェイブランドでも販売契約を結び、約200店舗の流通網で拡販を図っていく。米国で行っているインターネットによる販売や法人ビジネスは、「日本では小売店を通じて販売していく。ネット販売や企業に当社が直接販売することは考えていない」と断言する。

　しかし、課題がないわけではない。新生ゲートウェイは日本市場で着々とシェアを高めているイーマシーンズが、業績低迷の続くゲートウェイに買収される形で建て直しを図っているように映る。どちらが主役なのか。イノウエ社長が、「合併する前は、ゲートウェイのビジネスモデルを理解しているつもりだったが、そうではなかった。（今年3月の合併から約9か月経過した）現段階でも、社内体制の再構築に力を注いでいる」と語るように、なかなか社内組織も整わないようだ。

　また、ゲートウェイブランドのパソコンを購入したユーザーは、メーカー撤退という理由でサポートなどアフターサービスが受けられない状況を余儀なくされた。ユーザーサイドからみれば、ゲートウェイに対する信頼感は、ほとんどゼロに等しい。再び撤退するかもしれないというユーザーの不安も出てくるのは当たり前で、その中でのパソコン拡販は相当の覚悟が必要だろう。

　ゲートウェイが日本市場でシェアを拡大していくためには、ユーザーの信頼を取り戻すことが先決。サポートの強化に加え、ユーザーと接点がある販売パートナーの小売店との連携をさらに深めていくことが日本市場での成功のカギになる。(佐相彰彦●取材／文)