統合効果は2005年度から

　今年10月1日付で丸紅インフォテックとコンピュータウェーブ（CW）が合併し、3か月が過ぎようとしている。合併前に、「ハードウェアとソフトウェアを組み合わせた販売で、これまでになかったディストリビューション事業を行っていく」（梅﨑哲雄・丸紅インフォテック社長）と断言していたが、果たして統合効果は表れてきたのであろうか。

　合併に踏み切ったのは、「競合他社との差別化を図るためには得意分野を持つことが重要。なおかつ、企業ニーズに対応するためにハードとソフトの双方を持たなければならない」（同）との考えがあったからだ。顧客企業にとっては、ハードとソフトを一括調達することで購入単価が下がるメリットがある。

　新生丸紅インフォテックにとっては、顧客企業数が大幅に増えることが最大の利点だ。顧客数は両社共通の顧客600社、丸紅インフォテックの独自顧客が2300社、コンピュータウェーブの独自顧客が900社、合わせて3800社になる。両社共通の顧客はハードとソフト双方を購入しているものの、それぞれの独自顧客2300社にはソフト、900社にはハードが販売できるというわけだ。

　そのため、当面の売上拡大策については、丸紅インフォテックとコンピュータウェーブの取引先として重なる600社を除いた3200社を対象に、ハードとソフト両方を販売できるようにし、1顧客あたりの取引額のアップを図るという青写真を描いていた。

　しかし、実際のところは、ハード営業担当者によるソフト販売は実現できていない状況という。梅﨑社長は、「営業面では、合併前に描いていたイメージと大幅に異なっている」と打ち明ける。

　「ソフトウェアは、パッケージからウェブによるダウンロード、ライセンスなど、さまざまな販売形態がある。ハード営業担当者が顧客に対し、どのモデルが最適かを提案することが欠如している」（梅﨑社長）ため、ソフトウェアに関する勉強会を定期的に実施するなど、営業トレーニングを強化しているのが実情だ。

　一方、ソフト担当者によるハードの販売は、「ハード担当者がソフトを販売するのに比べれば課題は少ない」（同）としているものの、それならハード販売に傾注し始めているかというと、やはり馴染みのあるソフト販売に比重を置いているのも事実だ。

　同社では合併後の暫定体制として、来年3月末までハードビジネスを手がける「ハードカンパニー」とソフト販売の「ソフトカンパニー」の2カンパニー制を採用した。これは顧客企業の混乱を避けるためで、営業担当者の引き継ぎなどに考慮して窓口を一本化しなかった。しかし、合併したにもかかわらず、あえて組織を2分したことが、特に営業面で合併効果を阻害する要因になっていないだろうか。

　というのも、地方の支店や営業所では、すでにハードとソフトを組み合わせたビジネスが立ち上がり始めているからだ。地方は人員も少ないことから、ハードとソフト両方を販売する体制に素早く切り替えられたようだ。「ハードの顧客にソフトを販売することや、その逆も実現できている」（同）と、統合効果の表れを実感する。

　旧丸紅インフォテックと旧コンピュータウェーブの業務システムを統一するのは来年5月。これに合わせてカンパニー制も撤廃する予定で、「完全な融合会社」（同）に移行する。

　完全に融合した際に、営業面でハードとソフトの融合ビジネスを迅速に展開できるかどうか。新年度（2006年3月期）入り早々から、いよいよ合併の真価が問われてくることになる。(佐相彰彦●取材／文)