AVニーズで競争激化が要因

　テレビキャプチャボードなど映像関連機器の価格が下落傾向にある。BCNランキングによれば、夏商戦が一段落した2004年9月に1万5500円程度だった平均単価が、今年1月に入り1万4000円程度にまで下がってきた。

　多くの組立パソコン用パーツ専門店では、「映像関連機器の利益が高かった時代は過ぎ去った」という声が聞かれる。「自作パソコンユーザーがこぞって映像関連機器を購入したのは昨年夏まで。冬商戦からは、パソコン中級者や初級者も購入するようになってきた」という。薄型テレビなどデジタルAV（音響・映像）機器の需要が増大していることに加え、デスクトップを中心にパソコンでテレビを視聴することも普通になりつつある。映像ニーズの高まりから、映像関連機器を購入するユーザー層の裾野も広がり、パソコンを買い替えるよりもテレビキャプチャボードや外付け型のテレビキャプチャユニットなどを購入し、「できるだけ安く済ませたい」というユーザーが増えて価格競争に火が付いたようだ。映像関連機器は、パーツショップにとって〝稼ぎ頭〟の商材だっただけに、売価下落が一段と激しさを増し、利益減ともなれば痛手になる。

　メーカーサイドにとってもダメージは大きい。「パソコンでテレビを視聴する需要が増えるのは嬉しい反面、ユーザーの価格に対する要求が厳しく、台数が増えても金額が伸びないという傾向に陥る」（カノープスの高尾秀樹・管理本部企画推進室課長）と危機感を募らせる。そこで、「さまざまな端末で高画質な映像を楽しむための映像関連製品を開発していかなければならない」（同）と価格対策として製品開発強化を挙げる。

　カノープスでは、映像関連製品の新製品として、ノートパソコン用のテレビチューナー「豆ちゅーDVD」を発売した。同製品は、手のひらサイズのモバイル型で、DVD作成も可能。ノートパソコンでテレビチューナー内蔵モデルは市場の2割程度とデスクトップに比べて低く、この市場を開拓するため製品化に踏み切った。

　また、動画変換ソフト「かんたん換太郎 for Nintendo」を2月末からホームページでのダウンロード販売を開始する。同ソフトは、任天堂が提供するポータブルSDカードAVプレイヤー「プレイやん」で再生可能な動画ファイルを簡単に作成でき、「ゲームボーイアドバンスSP」や「ニンテンドーDS」などの携帯型ゲーム機でテレビ番組の視聴や音楽を楽しめる。価格は3990円とゲームソフトと比較しても安い。パソコンユーザー以外の需要を狙いにしている。

　バッファローでは、「パソコンとデジタル家電をつなげるという点で、パソコン周辺機器メーカーが果たす役割は大きい。これまで販売してきた製品でも、より簡単に分かりやすい操作を可能にし、さらに需要を増やしていく」（山口英利・取締役事業本部長）とし、ネットワーク内のマルチメディア機器をつなぐソフト「ピーキャストリンク」を開発した。同社が提供する無線LAN機器をはじめ、無線LANに対応した外付けハードディスク、テレビキャプチャユニット、ネットワークメディアプレイヤーなどをつなげ、「リンクでロック」という名称でネットワークハードディスクレコーディングシステムをアピールしている。

　パソコンメーカーがテレビチューナー搭載モデルで、さまざまなAV機能を付加していることが映像関連機器の価格を下げる原因になっているとの見方もある。パソコン周辺機器メーカーがビジネス領域を拡げ、新しい提案を行うのは、「パソコン依存からの脱却」に他ならない。(佐相彰彦●取材／文)