NPO向けビジネス拡大の可能性も

　急速に増え続けるNPO（民間非営利団体）法人が、ITビジネスの新たなマーケットとして注目を集めそうだ。

　内閣府国民生活局の調べによれば、NPO法人は2005年2月末で2万707団体。98年12月1日に特定非営利活動促進法（NPO法）が施行されNPOが誕生して以来、その数は毎年右肩上がりで推移する。

　NPO法の施行で、設立費用の不足などを理由に公益法人格を取得できず任意団体として活動してきた団体が、莫大な費用を投じなくても法人格を取得できるようになった。これによって、その数は一気に膨れ上がり、財団法人や社団法人など公益法人約2万6000団体に迫る勢いで増えている。

　そんななか、NPO向けITビジネスがこれまで以上に活気づく、という見方が広がっている。その理由は、公益法人の会計基準改正。公益法人の新会計基準が06年度からスタートすることで、NPOの設立にさらに拍車がかかり、マーケットが広がるとの見解からだ。

　公益法人の新会計基準では、一般企業並みの財務諸表の作成・開示が求められる。これまで以上に明確で詳細な形での財務情報の開示が必要になるわけだ。「これまで正確な財務諸表を作成している公益法人は少なく、全体の30％はデタラメ」（大手会計ソフトベンダー）だった状況が、一気に是正されることになる。万一、新会計基準に対応できなければ、公益法人格を取り消されることもある。このことで、公益法人としてではなく、NPOとして活動する団体が増え、「特殊法人のなかでNPOは最も増える」との予測が強まっている。

　NPOは、10人以下の少数で活動することが多く、システム管理者がいないことが大半。IT化が遅れている分野だけに、ITベンダーがビジネス展開できるフィールドも広がるというわけだ。これに加えて、現在のNPOの会計基準は〝強制〟ではなく、〝推奨〟のレベル。今回の会計基準の改正は、あくまで公益法人を対象としておりNPOは対象ではないが、NPOの会計基準も今後推奨から強制へと動く可能性もある。今からNPO向けの会計基準を満たした財務諸表の作成を行おうとする動きが高まり、情報システムの導入を検討するNPOが増えるというわけだ。

　会計ソフト開発・販売のピー・シー・エー（PCA）は、NPO向け会計ソフトパッケージを他の会計ソフトメーカーに先駆けて開発。02年6月に市場投入した。〝推奨〟基準である「特定非営利活動法人の会計の手引き」に準拠し、NPO特有の会計基準に合わせた機能を加えている。これまで大規模なNPOを中心に、500団体以上に納入した実績を持つ。

　亀井俊宏・営業本部企画室係長は、「公益法人の新会計基準のスタートで、NPOがさらに増えるのは必至。有望な市場であることは間違いない」と話す。

　会計ソフトメーカー、ソリマチもこれに追随。04年9月にNPO向け会計ソフトを投入している。このほか、「市場参入を前向きに検討している」と話す会計ソフトメーカーもある。

　中堅システムインテグレータの日本事務器（NJC）の徳永勝哉・公共事業推進本部販売推進部公共自治体販売推進グループマネージャは、「現在は静観の状態」とするものの、「急速に数が増えているだけに、ビジネスチャンスがないとは思っていない。どれほどの商機があるかを調査をしている最中」としている。

　公益法人の会計基準改正を機に、公益法人向けITビジネスを強化する動きは強い。その動きと並行して、派生効果を期待しNPOにもフォーカスを当てビジネス拡大を目論むベンダーが登場しつつある。(木村剛士●取材／文)