OSS普及で需要が着実に拡大

　オープンソースソフトウェア（OSS）が浸透し、なかでもLinuxの普及が進んでいる。普及が進むにつれて、Linuxサーバーに導入するコンピュータウイルス対策ソフトが注目を集め始めた。市場に飽和感のあるウイルス対策ソフト市場で、新たな需要として期待されている。

　Linuxは、クライアントパソコンでは普及は進まないものの、サーバーでは企業・法人を問わず伸びている。

　IT調査会社のガートナージャパンによると、2004年の段階でLinuxを活用しているユーザーは民間企業では約4割、自治体では約5割まで拡大した。特に自治体での導入は著しく、自治体で使われているプラットフォームのなかで、Linuxはウィンドウズに次ぐポジションだ。また、IDCジャパンの予測では、OS市場でLinuxのシェアは06年には15.1％に達するとしており、今後もシェア拡大は続くとの予想だ。

　その普及に比例するように、Linux向けのウイルスも増えているという。OSの脆弱性（ソフトのプログラム上の欠陥）は、ウィンドウズだけでなく他のOSでも存在する。普及が進めば進むほど、ハッカーの標的になる可能性は高くなるため、Linuxの脆弱性を狙ったウイルスも多くなる。「具体的な数値はまとめていないが、Linuxを狙ったウイルスは増えている」（トレンドマイクロ）という。

　この流れに乗り、Linux向けセキュリティソフトを順調に伸ばしている企業がある。Linuxサーバー管理ソフトなど、Linux関連に特化したソフト開発・販売をメイン事業に据えるホライズン・デジタル・エンタープライズ（HDE）は、2年前にセキュリティ分野に進出した。Linuxサーバー向けのウイルス対策ソフト、Eメールチェックソフト、スパム（迷惑メール）対策ソフトの3つをラインアップ。セキュリティ市場参入後2年ながら、今年度（05年9月期）は「売上高の約30％を占めるまでに急成長している」（小椋一宏・HDE社長）という。

　小椋社長は、「ウイルス感染を心配して、サーバー管理ソフトと一緒に購入するケースが出てきた。Linuxに特化したソフト開発を手がけているため、Linuxに強いイメージがあり、後発でも顧客を獲得できている」と話しており、今後もセキュリティに力を入れる方針を掲げる。

　日本エフ・セキュアでは、Linux向けセキュリティソフトが売上高の約60％を占める。売れ筋商品は、Linuxゲートウェイサーバー向けのウイルス対策ソフト。Linuxに以前から力を入れていることから、対応するLinuxの数や、機能の豊富さは他社に比べ多く、「他社のソフトを競合と思ったことはない」（渡邊宏社長）と自信を示す。このLinuxゲートウェイサーバー向けウイルス対策ソフトの今年の販売額は、前年に比べ3─4倍のペースで伸びている。

　渡邊社長は、「ウイルスの数が急増しているとは感じていない。ウイルスが発生しなくても、心配だから導入しておくという意識が高まっていることが大きい」と話している。　ウイルスの発生が頻繁になり始めた00年頃から、情報セキュリティ対策のなかで最も好調だったウイルス対策ソフトだが、最近では市場に飽和感があるのは否めない。主役は、パソコンの操作管理・監視ソフトや個人認証などの内部情報漏えいソフトに移りつつある。だが、Linuxの普及でウイルス対策ソフトが再び陽の目を見ることも十分考えられる。(木村剛士●取材／文)