対応アプリ増やし自社OSの拡大狙う

　ミラクル・リナックスの佐藤武社長は、最近のLinuxに関する顧客の動向を分析し、「業務アプリケーション用サーバーにもLinuxを使う傾向が強くなってきた」と語る。

　ウェブサーバーやメールサーバーなどで採用されることが多いLinuxが、顧客の規模に関わらず、業務アプリケーションを動かすためのプラットフォームとしても普及期に入ってきているというわけだ。

　ユーザーがLinuxをプラットフォームとして業務アプリケーションソフトを活用する風潮が強まれば、独立系ソフトウェアベンダー（ISV）は、各種のLinuxプラットフォームの特徴を研究し、「Linux対応」を本格的に進める必要性も出てくることになる。

　ミラクル・リナックスは今年8月、ISV向け支援プログラムを刷新した。動作検証に関わる技術支援のほか、販売支援プログラムも盛り込み、手厚いサポート内容とした。その狙いは、ISVが持つアプリケーションを数多く「ミラクル・リナックス」上で動作させるためだ。佐藤社長は、「ISVの対応数の拡大こそが、いま最も重要」と、ターゲットは明確だと言いたげ。

　レッドハットも同様だ。対応業務アプリケーションの数を増やすことを強化ポイントに挙げる。昨年7月、親会社の米レッドハットが進めているISV支援プログラムを日本独自にアレンジし、日本市場オリジナルのパートナープログラムをスタートさせた。ワールドワイドでみれば、対応するISVは1200社以上だが、日本国内ではまだ100社程度と少ない。この対応企業数を「年率25％以上で増やす」（土屋淑恵・パートナーマーケティングマネージャー）ことを目標に掲げている。

　Linuxディストリビュータは、業務アプリケーションでLinuxプラットフォームに対応するケースが増加していることを実感する。自社のプラットフォーム上で動くアプリケーションの数が、ビジネスを継続するうえでの生命線になると考えている。そのため、ISVの囲い込みに走っているわけだ。

　ミラクル・リナックスでは、11月末までに「ミラクル・リナックス」に対応するアプリケーションの数を200種類まで高める計画。発表後約1か月経った9月上旬の段階で、すでに「50─60アプリケーションは揃った」（佐藤社長）とし、立ち上がりは順調という。

　各社が用意するISV向けパートナープログラムで魅力的なのは、Linuxディストリビュータが用意する営業支援プログラムだ。技術支援のほか、自社のプラットフォームに対応するアプリケーションの宣伝など、ユーザーや販売会社向けに配る小冊子やウェブサイトで自社のアプリケーションをプロモーションすることができる。佐藤社長は、「営業支援施策がかなり評価を得ている」と話す。また、レッドハットの土屋パートナーマーケティングマネージャーは、「対応するためにはそれほどの能力を必要としないし、トレーニングメニューも十分用意している」と容易に対応させるためのプログラムであることをアピールする。

　一部のISVからは、「ウィンドウズに対応していれば十分。対応のプラットフォームを増やすことよりも、新バージョンの開発や機能拡張を進める方が先決」（小規模のパッケージソフトハウス）という声もあり、Linuxを軽視するベンダーが無いわけではない。

　こうした動きは、Linuxが業務アプリケーション向け基盤として十分に選択肢に挙げられるケースが増えていることの証拠だ。業務アプリケーション向けのプラットフォームとしてLinuxに対する要望が強まれば、ISVも複数のプラットフォームに対応する必要が出てくるわけだ。 木村剛士●取材／文