大手ディストリビュータがソフトウェアのライセンスビジネスを強化する動きが目立っている。各社とも、インターネットを通じて製品の受発注が行えるウェブEDIの強化に力を注いでおり、販売パートナーが売りやすい環境を整えることで顧客企業を増やしていく。ライセンスビジネスを拡大するうえで、各社が焦点を当てているのは、まだまだ需要が眠るSMB（中堅・中小企業）分野。ソフトのパッケージ販売と比べてリピート率が高いライセンスで新規顧客を開拓し、ソフトウェアビジネスの拡大につなげていく。（佐相彰彦●取材／文）

ソフトビジネス拡大に寄与

■新サービス提供が相次ぐ

　丸紅インフォテックは、販売パートナー向けにウェブEDIのASPサービスを2005年12月末をめどに開始する。このサービスは、販売パートナーが同社のインターネット情報サービス「ビーコン」を、自社ホームページを通してユーザー企業向けに提供できるというもの。ライセンス販売では、約125社のソフトメーカーが提供する製品の簡単見積もり機能が特徴となる。国府健一・販売促進本部長補佐は、「販売パートナーにとっては、ユーザー企業からの価格に関する問い合わせを効率化できることが最大のメリットになる」と強調する。ユーザー企業にとっては、各販売パートナーのサイトから、どのようにライセンスを購入すればリーズナブルになるかを検索できるため、「価格の安心感などで、当サービスを導入している販売パートナーからの購入を促進できるのではないか」（同）とみている。

　ソフトバンクBBでは、販売パートナー向けのライセンス管理支援サービスを12月から開始した。同サービスは、更新時期や購入状態など既存顧客のライセンス状況を販売パートナーが閲覧できる。ソフトバンクBBが管理しているデータを各販売パートナーに合わせて提供するというものだ。「販売パートナーにとっては、更新の告知や新しいライセンスの提案などプッシュ型の営業を行えるようになり、既存顧客への付加価値サービスにつながる」（原山健一・流通事業本部ソフトウェアマーケティング統括部長）と判断した。当面は、販売パートナーが既存顧客のライセンス状況を把握できる範囲はセキュリティなど5社のメーカー製ソフトだけにとどまるが、「近い将来、20社程度まで引き上げる」（同）としている。

　大塚商会は、顧客企業がマイクロソフトとアドビシステムズ、トレンドマイクロ3社のソフトウェアライセンスをウェブで発注できるサービスを無償で開始した。既存顧客の2社がテスト的に導入し、「さまざまな購入形態のパターンを簡単に見積れるという点で好評」（米田仁哉・マーケティング本部テクニカルプロモーション部Microsoftグループ課長）という。

■成長事業をとことん伸ばす

　ディストリビュータ各社がライセンスビジネスの拡大に力を注いでいるのは、「リピート率が高い」（丸紅インフォテック・国府本部長補佐）ためで、パッケージ販売と比べ既存顧客を囲い込めることが背景にある。「顧客1社あたりのビジネスボリュームを増やせる可能性が高い」（大塚商会・米田課長）ことも要因だ。

　また、ソフトのライセンス購入は大企業市場で当たり前になっているものの、「SMB市場は、まだまだ需要が眠っている」（ソフトバンクBB・原山統括部長）という。「新サービスの提供は、各社ともSMBのライセンス購入を促すアイテムとして新規顧客を開拓できる」（大塚商会・米田課長）というわけだ。

　SMB市場では、「法人向けソフトビジネスの売り上げは伸びている。その60％がライセンス提供で、この比率はさらに上がっていく」（丸紅インフォテック・国府本部長補佐）、「ライセンス販売は、4－9月の6か月間で前年同期と比べ2ケタ成長を達成した。この成長を維持すれば、今年度（06年3月期）の法人向けソフトビジネスは前年度を上回ることは確実」（ソフトバンクBB・原山統括部長）、「ライセンス販売が好調であるため、今年度（05年12月期）のソフトビジネスの売り上げは、前期比2ケタ増を見込む」（大塚商会・米田課長）としている。ライセンス販売の増加は、ソフトビジネス全体を伸ばす大きな原動力にもなっている。