IT減税、使い道はまだあり

　2003年度から05年度までの3年間、減税規模6000億円といわれた大規模な減税制度「IT投資促進税制（IT減税）」が今年3月末で終わる。

　IT減税は、創設以前にあった「情報通信機器の即時償却制度（通称、パソコン減税）」や、「中小企業投資促進税制」などの他の減税制度に比べ、ソフトウェアを初めて対象にするなど適用範囲がはるかに広く、また手続きが以前の減税制度に比べ容易になっていた。このため、この約3年間低迷してきたIT需要を喚起する起爆剤として大きな役割を果たしたといえるだろう。

　あるSIer社長は、「IT減税がなければ、業績の低迷を食い止めることができなかったかもしれない」とまでいう。決して活況とはいえなかったIT業界のなかで、案件を勝ち取るためにIT減税が大きな武器になったようだ。

　経済産業省では、IT減税の直接的な効果を「GDP（国内総生産）を2兆円押し上げる効果があった。その後の保守や運用を含め、中長期的な観点からすれば2倍にあたる4兆円の効果はあったかもしれない」（経産省の石川浩・商務情報政策局情報処理振興課課長補佐）と説明しており、一定の成果を出せた満足感をにじませている。

　4月以降、新たなITに関する減税制度が始まることは確実。だが、IT減税よりも適用範囲が広がり、減税規模が膨らむことはまず考えられない。いわば、IT減税ほどの大規模な減税制度の恩恵を受けられる期間は、ユーザーにとっても、そしてITベンダーにとっても残り3か月なわけだ。

　IT減税が終わることを受け、終了することを武器にして最後の〝IT減税特需〟を喚起できる余地はまだあるのではないだろうか。

　IT減税は、パソコンやサーバー、プリンタのほか、ルータやデジタル複写機などのハードウェアも対象になるほか、無形固定資産のソフトも適用範囲に含まれる。その取得価格のうち10％が税額控除される。

　また、業績不振で減税の恩恵が受けにくい企業であっても、対象となるIT取得資産の50％が特別償却として認められる。税額控除か特別償却か、どちらを選択するかは企業の自由になっている。

　加えて、中堅・中小企業のIT投資がリース中心であることを踏まえ、資本金3億円以下の企業に対しては、税額控除の対象にリース案件（料金総額の60％）も含められている。つまり、大半のユーザー企業がIT減税を使えるのだ。

　中小企業を中心顧客に据える、あるSIerトップは、「駆け込み需要は必ずある。ただ、何もせずに待っていても顧客は気づかない。この特需を取り込むため、営業担当者にはIT減税の効果をアピールするように再度号令をかけている。3月にIT減税が終わることを受け、競合他社はアピールしていないため有効的なはず」と期待を膨らませる。

　一方で「この3年間、IT減税が武器になって、ビジネスの拡大に寄与した例はほとんどない」（保守サービスベンダー）と、減税制度自体に冷やかな見方もある。企業にとってその反応はさまざまだ。

　だが、適用期間が残りわずかなこの時期に、顧客への提案でIT減税の説明をするだけでも顧客の反応は、違うのではないだろうか。

　減税適用期間はすでに残り3か月を切っている。IT減税を提案の武器に活用できる時間は残りわずかだ。 木村剛士●取材／文