導入スキル備えた人材を育成

　「ITスキル標準（ITSS）」の〝適切な〟活用に向けて──。

　今春、ITSS普及促進団体である特定非営利活動法人（NPO）のITSSユーザー協会（唐津一会長）が、ITSS導入支援コンサルタントの認定制度を始める。

　ITSSの導入支援サービスを手がけるコンサルタントが備えなければならない知識とスキルを、同協会が独自に定めて試験を行い、合格した人材を導入支援コンサルタントとして認定する制度だ。同協会は昨年からその必要性を感じ準備を進めていたが、ここにきて具体的なプログラム内容や運用体制が固まりつつある。早ければ4月にスタートすることになりそうだ。

　IT人材の不足と、人材教育に対するIT産業界の意識の低さが懸念されているなか、ITSSを利用者の立場から熟知している同協会が、初めてITSSの導入支援コンサルタントの認定制度を始める意義は大きい。

　ITSSの初期バージョンが発表されてから2年3か月、政府が用意した初のITスキル指標であるITSSは、普及が進んだという意見もあるが、一方で「〝適切〟に導入している企業は少ない」（駒谷昇一・ITSSユーザー協会運営委員導入コンサルタント認定委員会委員長＝NTTソフトウェアエンタープライズ・ソリューション事業グループ営業SE部門ソフトウェアプロセスコンサルティングセンターチーフエキスパート）という手厳しい意見もあった。

　ITSSユーザー協会の設立から携わっている駒谷氏は、この2年3か月を振り返ってこう話す。「ITSSの活用方法をみると、単純に人事制度に反映するだけで満足する傾向が強く、スキル診断後の教育プラン作成までできている企業が少なすぎる。本来の狙いである人材育成プランの作成に活用している企業が一体どの程度あるのか…」。

　これまで、ITSSを活用することで、導入支援コンサルティングサービスを手がける企業は多く登場してきた。

　ただ、その導入支援コンサルタントを認定する制度や資格制度はなかった。コンサルティング会社やITベンダーが独自にコンサルティングサービスを手がけているものの、適切な導入のために必要なスキルは明確に定められていなかったというわけだ。

　そのため、サービスレベルは統一されておらず、「適切な導入を支援できるコンサルタントが多いかといえば、疑問」という状況に陥っていた。

　ITSSは、あくまで現状のIT技術者のスキルを測る指標であり、物差しでしかない。単純に社員の給与を定めるためのツールとしてしか使っていない企業が多いというのが、駒谷氏らが〝適切〟に導入できていないと嘆く所以だ。

　ただ、何百ページにもなるITスキル標準を理解し、そのうえで自社の経営戦略に沿って人材育成プランを作成するには相当のスキルと時間が必要になる。

　「導入するにはITSSを熟知するコンサルタントの活用が不可欠」という。そのなかで、ITSSの成功事例や失敗事例を収集し、ユーザーの立場になって分析・研究し、経済産業省やIPA（情報処理推進機構）とも連携をとっているITSSユーザー協会が進める認定試験の意味は大きい。

　今年3月には、バージョンアップ版の「ITSS Ver・2・0」が発表される。新バージョン普及促進を加速させる観点から、認定コンサルタント制度の動向が注目される。 木村剛士●取材／文