経産省の対応が混乱に拍車

　電気用品安全法に基づいて、今年4月から適用されるPSE（Product Safety Electrical Appliance＆Materials）マークを巡る騒動が続いている。今後、PSEマークがついていないテレビやビデオが販売できなくなるとあって、リサイクル業者などからの猛反発をかっているのだ。

　もともと電気用品安全法は、1962年（昭和37年）に施行された電気用品取締法を改正し、01年4月からスタートした法律。ただし、今年3月31日までの5年間が適用の猶予期間だった。メーカーは01年4月から順次、02年4月以降は該当製品全てにPSEマークをつけて出荷してきた。

　問題が表面化したのは、今年に入ってから。「3月末で猶予期間が終了し、PSEマークが付いていない製品が販売禁止となる」ことの告知が不十分であったため、中古業者や家電店で行き場のない中古製品の不良在庫が大量に発生することとなった。

　エレキギターやオーディオ製品などアンティークな電気製品の愛好家からは入手する手段がなくなることへの不満が吹き出すなど、騒ぎは大きくなるばかり。中古家電製品を取り扱うソフマップにしても、顧客に規制対象商品の買い取り終了の告知を開始したのは2月上旬だった。

　ここまでの混乱を招いた責任は、経済産業省の場当たり的な対応にある。5年間の販売猶予期間があったとはいえ、一般消費者はここ2─3か月のマスメディアによる報道をきっかけに、初めてPSEマークの存在を知った人が大半だろう。また、どんな電気製品がPSEマークに該当するのかという区分のわかりにくさが、混乱に拍車をかける形になったことも否定できない。

　同法は、対象となる製品にパソコンやプリンタを含んでいない。規制対象のなかにACアダプタは含まれているが、パソコンが規制対象ではないため、付属するACアダプタについても対象外となる。しかし、テレビパソコンについては該当する機種がある。また、安定した中古機市場ができあがっていたゲーム機やMIDIが対象商品にあたる。ソフマップでは、MIDIやゲーム機についてPSEマークが付いていない製品は2月中に買い取りをやめている。

　PSEのような安全基準には、異論はない。しかし、こうした制度を実施するに当たっては、市場に与える影響を考慮し、無用の混乱を避けるための十分な告知活動が欠かせない。この点で、経産省は説明責任を果たしていないと指摘されても当然だろう。

　過熱する一方の反発に対して、経産省は、3月14日、希少価値の高い「ビンテージもの」などの中古機材を規制対象から事実上外すなどの措置を突然発表した。しかし、いわゆる「ビンテージもの」の定義も曖昧であり、この定義については「今後詰めていく」と、応急処置の段階。

　現状で一番混乱が起きているのは、中古業者であるが、秋葉原電気街振興会によると、秋葉原界隈で今回の件で廃業に追い込まれた業者は出ていないようだ。

　応急措置を出す前の経産省の対応は、中古業者をないがしろにしたと言っても過言ではない。反発を予測できなかったのだろうか。さらに、この段階にきて応急的な措置をとるのであれば、もっと早く対応していてもよかったはずだ。ある中古業者は、毅然とした態度で「いくらでも生き残る術はある」と強気の姿勢を示しながらも、今後も経産省と折衝していくという。経産省は、平等で柔軟な対応策を出してほしい。 田澤理恵●取材／文