無線LAN、SMBで導入盛ん

　個人向けビジネスが主流の無線LAN機器メーカーが、法人事業も順調に伸ばしている。ネットワークのリプレース時に無線LANを導入するSMB（中堅・中小企業）の増加が背景にある。

　バッファローでは、ネットワーク機器の法人事業が売上高で年率2ケタ成長を遂げており、「06年度（07年3月期）以降は年率30％増を見込んでいる」（石丸正弥・ブロードバンドソリューションズ事業部マーケティンググループリーダー）という。無線LAN機器は個人市場での販売が中心だったが、「最近はSMBがリプレース時に無線LANシステムを導入するケースが多くなり、法人市場でも売れるようになった」ためだ。当面は、スイッチと無線LANアクセスポイント、無線LANカードなどの組み合わせで新規顧客を開拓していく。

　コレガでは、「法人向け製品は充実していない。そのため、法人事業の売り上げは、昨年度（05年12月期）で1ケタ成長にとどまっている」（加藤彰社長）と打ち明ける。しかし、「100人以下の事務所では、ネットワークシステムのリプレース時に低コストを求めたり、有線の煩わしさを解消するため、ワイヤレスの導入傾向が高まってきた」とみており、製品面で高速無線LAN技術「MIMO（マイモ）」搭載製品の充実や、「RoHS指令」対応機器の発売を予定している。サポート面では、SIerに対して同社製品で可能なシステム構築のトレーニングを実施。100人以下の中小企業や営業所に無線LANを提供するための教育を行っていくという。こうした取り組みで、法人事業の売上高を2ケタ台に引き上げ、成長軌道に乗せる。

　SMB向け無線LANネットワーク構築ビジネスが拡大しつつあるのは、低価格で導入可能であることが要因の1つとしてあげられる。バッファロー、コレガの2社は、無線LANルータやスイッチなどネットワーク機器を個人向けに販売するビジネスが主流であるため、「法人向け製品であっても、1製品あたりの価格は5万円で高いほう」（バッファローの石丸グループリーダー）という。ある大手ディストリビュータ幹部は、「ネットワークをリプレースする際、できるだけ安く済ませたいという企業は多く、法人向けネットワーク機器ではなく、個人向け製品の購入を検討するSMBも出ている」と指摘する。

　しかも、SMB向け製品だからといって大企業向け製品と比べ劣っていないことがSMBの無線LAN導入を加速させている。コレガの加藤社長は、「大企業やSMB、個人に限らず、回線障害はあってはならない。そのため、高品質の追求を徹底している」。バッファローの石丸グループリーダーも、「個人と企業ともにユーザーであれば無線LAN製品を購入する決め手となるのが安全性や安定性。こうしたニーズには、無線LAN3規格への対応で電波干渉を防いでいる」としている。

　無線LAN製品の安全性や安定性を認めるSMBが一段と増えれば、無線LANに強いメーカーが法人向けネットワーク機器市場でシェアを伸ばす可能性は十分に秘めている。また、最近ではネットワーク系SIerが新規顧客の開拓に向け、特定ベンダーの製品に固執しないビジネスを手がける傾向が高まっている。これまでは、法人向け製品に特化したネットワーク機器メーカーのみと販売契約を結んでいたが、SMB市場で顧客を増やすために個人向け市場にも強い無線LANメーカーとアライアンスを組むケースも出てくるのではないだろうか。 佐相彰彦●取材／文