韓国系が国内企業の傘下に

韓国人IT技術者を国内の企業に派遣するビジネスが新しい局面を迎えた。

　ジャスネット（宮崎直榮社長、東京都港区）が大手情報サービス会社との関係を一部解消しIT系人材派遣会社の日本テクシード（森本一臣社長、本社・名古屋市、JASDAQ上場）の資本参加を受けてグループ入りしたほか、2004年設立のAICON（鈴木義矩社長）がクリエアナブキ（藏田徹社長、本社・高松市、JASDAQ上場）の子会社となった。

ジャスネットは97年にスタートした日韓IT人材交流プロジェクトの一環として、アルゴ21、ピーシーエー、翼システムなどが出資して98年に設立、韓国人力公社─韓国情報産業聨合会と提携して韓国人IT技術者を受け入れ、国内企業に派遣している。一時期は約250人の技術者を派遣していたが、出資企業の業績不振から受注が減少し、立て直しが課題となっていた。

　日本テクシードは79年設立で、従業員は約1200人、年商規模は04年度約75億円。名古屋市を中心に電気、電子、機械系CAD／CAMオペレーターやソフトウェア開発要員の派遣を行っており、ジャスネットの要員を受け入れるなど、長年の関係があった。韓国人IT技術者がユーザーから高く評価されていることに着目し、新規事業として「ソフトウェアの国内オフショア開発」を立ち上げる。出資額は6500万円で、これに伴いアルゴ21やピーシーエーなど既存の企業が出資を一部引き揚げた。

　一方のAICONはジャスネットを創業した鈴木氏が韓国の6大学と提携し、日本で人材難が指摘されているエンベデッド系技術者に照準を当てて04年11月に設立した。韓国の6大学が連携し、日本向けの専門コースを開設するなどして人材を育成しており、この春に第一陣60人をAICONが正社員として採用している。その同社はこのたび、運転資金や営業力の観点から、人材派遣サービスのクリエアナブキの申し入れを受け入れた。クリエアナブキのAICONへの出資額は1億円。

　ジャスネットの宮崎直榮社長は、「日本テクシードのソフト事業を担う中核会社という位置づけで、日本テクシードの既存のサービス・メニューを提供できるので、ユーザーに選択肢が広がった。今後は中堅・中小ソフト会社とのパートナー戦略を強化・拡大する」と話している。

　また、AICONの鈴木義矩社長は、「資本関係で見ると出資会社（クリエアナブキ）の傘下に入ったかたちだが、独自性は今後とも維持する。資本参加を希望する企業は他にもあり、韓国人IT技術者が認められてきた」と語っている。

先に情報サービス産業協会や日本電子情報技術協会が実施した国内における外国人IT技術者就労状況調査によると、中国人と韓国人の割合は2対1だが、ここ数年で韓国人IT技術者を起用する企業が急増、中国人は頭打ちとなっている。言葉の問題や生活習慣などから、「海外オフショアは中国、国内オンサイトは韓国人」という認識が定着しつつある。

　今回、韓国人IT技術者派遣2社に国内派遣会社が出資した背景には、人材派遣会社の人件費圧縮ニーズがある一方、韓国人IT技術者の日本語会話力や技術力が評価されたことの証ともいえる。ユーザー系や独立系の情報サービス会社が独自に韓国人IT技術者の現地採用に乗り出す動きもあり、「国内のソフト労働市場が国際化する一歩」と見る向きもある。 佃均（ジャーナリスト）●取材／文