PCセキュリティ市場で激突

　PC向けセキュリティ製品で、今年後半から来年にかけて有力ソフトメーカーから大型商材が日本市場に投入される。主役を演じるメーカーは、シマンテックとマイクロソフト。両社ともに、価格や販売チャネルなどの戦略はまだベールに覆われたままだが、機能はかなり似通っている。セキュリティソフト最大手と巨大ソフトメーカーが、今年後半から同じ土俵でしのぎを削る構図が生まれる。

　シマンテックが今回新たにリリースするのは、コードネーム「Genesis（ジェネシス）」と呼ばれるサービス。今秋をめどに日本市場で提供を開始する計画だ。ウイルス、スパイウェアの検知・駆除からフィッシング対策など、同社の総合セキュリティソフト「ノートンインターネット　セキュリティ」が持つ機能に加え、データのバックアップやパソコンの最適化などユーティリティ機能も付加する。複雑な設定が必要なく、ソフトをインストールすればほぼ全自動で機能を利用できるサービスとして、初心者ユーザー獲得の新商材と位置づける。

　一方、セキュリティソフトとは無縁だったマイクロソフトは、「WindowsLive OneCare」の名称で、いよいよ新規参入することになる。米国では今年6月から販売することが決まっているが、日本市場ではまず今秋にβ版を提供。正式リリースは来年中という。

　注目すべきポイントはその機能。ウイルスおよびスパイウェア対策、パーソナルファイアウォール、PCメンテナンスなどの機能をオールインワンで提供するサービスであり、シマンテックのジェネシスと機能が酷似している。

　シマンテックの大岩憲三・コンシューマ営業統括本部執行役員統括本部長は、「OneCareの具体的な機能や技術が分からないため、何とも言えない。だが、マイクロソフトが参入することでセキュリティの重要性は広く認知されることになる。シマンテックのビジネスにはプラス材料だ」と断言。ライバル視する姿勢をみせない。

　販売チャネルや価格が大きな焦点となるが、両社ともにこの点については、言及を避ける。

　シマンテックは、「価格は未定。販売チャネルについては、パッケージとISPのネット接続サービスのメニューの1つとして提供する以外に他のチャネルも検討中」（大岩氏）。一方、マイクロソフトは米本社では約5ドルで3ユーザー利用可能なライセンスモデルで提供することが決定しているが、日本市場においては、「まだ未定であり、チャネルについてもまだ検討段階で決まっていない」（石井恵子・MSN事業部サービス部コミュニケーションサービスグループプロダクトマネージャー）と説明する。

　具体的なビジネス戦略で両社のツバ迫り合いが始まるのは今年後半からになりそうだが、セキュリティソフト市場で注目の的になることは間違いない。また、両社が投入するサービスは、これまでのセキュリティの枠を越え、ユーティリティやアベイラビリティといった分野の機能まで包含している。単純なセキュリティ機能だけではないだけに、PC最適化やバックアップなどの機能を持っていない競合メーカーがどう動くかも、要注目の見所だ。 木村剛士●取材／文