米ネットワーク機器メーカーがアジア地域でのビジネス拡大に本腰を入れ始めた。低価格路線によるブランド力のアップや自社製品の連携など各社それぞれの強化策で新規顧客の開拓に力を注ぐ。アジアビジネスの強化は、シェア増が見込める地域を伸ばすことによってワールドワイドのマーケットで主導権を握るという思惑がある。なかでも、日本市場での成長に力を入れる企業が増えているようだ。（佐相彰彦●取材／文）

未開拓地域で新規顧客獲得
マーケットの主導権獲得が狙い

■低価格化や製品連携などを強化　カギ握るブランド力のアップ

　ワールドワイドのネットワーク機器市場で上位シェアを確保しているメーカーは、低価格化や新市場への参入などでシェア拡大を図っていく。

　米ヒューレット・パッカードは、アジア地域で低価格路線を強化。なかでも、「アジア地域のビジネス拡大は、ブランド力アップがカギとなる。知名度を高めるためには、競争力のある価格帯でシェアを高めていく“バリューポジション”を獲得することが最適な策」（クラウド・カレージャ・アジア地域＆日本担当プロカーブネットワーキングビジネス・マーケティングマネージャー）としており、ネットワーク製品の「プロカーブ」シリーズ「5406zl」や「5406zl－48G」などの購入でライセンス料金が無料といった低価格キャンペーンなどを打ち出している。低価格戦略で、オーストラリアではマーケットシェア2位を獲得したという。

　米ジュニパーネットワークスでは、主力の通信事業者向け市場でのシェアを確保することに加え、法人向け市場で新規顧客を開拓していく。アンドリュー・マー・アジア地域担当・エンタープライズマーケティングディレクターは、「ワールドワイドでは、法人向けビジネスの売上比率が30％まで増えている。アジア地域でも、これを達成させる」とし、企業顧客を獲得するため、セキュリティビジネスに力を入れる。

　今年4月に、ウェブアプリケーション高速化装置「DX」シリーズの基本ソフト「DX OS」を刷新した。最新版は、SSL－VPN装置やルーターなど同社製品の連携機能を強化。ルータやWAN高速化装置などのQoSと互換性を持たせアプリケーション単位でQoSの設定が可能になったほか、負荷分散とサーバー・アクセスの高速化処理で2台を必要としていたVPN装置を1台で行えるようにした。製品機能の強化に加え、「SOA（サービス指向アーキテクチャ）などアプリケーションレベルのサービスを視野に入れたビジネスを手がけていく」（同）ことで法人向け事業の拡大につなげる。

■自社OSをアピールするメーカー　通信環境整う日本市場掘り起こしへ

　自社のネットワークOSをアピールするメーカーもある。

　米レッドバックネットワークスは、主力事業のIP管理システムで「ネットワーク機器市場で圧倒的な地位を築く。ジュニパーのネットワークOSである『JUNOS（ジュノス）』は、ナローバンド時代ではメインだった。ところが、ブロードバンドが普及するにつれて、当社の『SEOS（セノス）』が主流になりつつある」（マルコ・ワンダーズ・CMO）と断言する。同社のエッジ製品「SmartEge（スマートエッジ）」は、1台でIPネットワークを管理できることが特徴で、「他社製品はエッジルータやゲートウェイなど何台も設置しなければならない。複雑なシステムの簡略化は、IP化を促進させることにもつながる」（同）としている。なかでも、「日本市場は、ほかの国よりもブロードバンド環境が進んでいる。そのため、製品を拡販できるのではないか」（サイモン・ウィリアムズ・アジア地域販売兼管理担当副社長）とみている。

　各社がアジアでのビジネス拡大を図ろうとしているのは、欧米と比べて未開拓地域が多いためだ。「中国政府がIP化を進めていることなどもあり、ビジネスチャンスは大きい」（米レッドバックネットワークスのウィリアムズ副社長）や、「日本は米国に次ぐ世界第2位のマーケットだが、まだまだ開拓の余地は大きい」（米HPのカレージャ・マーケティングマネージャー）などの声があがる。

　ネットワーク機器メーカーにとっては、アジアでのシェア拡大がマーケットの主導権を握る重要な地域であることは間違いない。