ネットワーク系SIerが事業拡大に動く

　ネットワーク系ベンダー各社が、2006年度を“NGN（ネクスト・ジェネレーション・ネットワーク）元年”とし、事業拡大に動き始めている。

　次世代の統合IPネットワークといわれるNGNは、導入すればIP技術の活用で電話網を構築、電話やテレビ会議、ストリーミングなど、さまざまなサービス提供が可能となり、通信事業者が積極的にシステム構築を進めている。NTTでは、2010年までに累計5兆円を投資する予定で、今年後半からフィールドトライアルとしてシステムの構築を計画。通信事業者が莫大な投資額を打ち出しているのを受け、ベンダー各社が受注獲得に向けて躍起になっているというわけだ。

　大手ネットワーク系SIerのネットワンシステムズでは、IPネットワークの構築だけでなく、セキュリティやデータベースの相互接続が可能なシステム提供などを模索。「まずは、既存ネットワークに付加価値をつけるソリューションを積極的に開発し、それをNGNに対応できる技術研究に力を注ぐことで、通信事業者によるNGN本格導入時に圧倒的な差別化策を講じる」（澤田脩社長）としている。同社は06年度、NGNビジネスで50億円の売上高を見込む。「全体の売上高が1200億円の見通しなので、売上比率でみると50億円という額は小さい。しかし、今年度に小さな案件でも受注できれば、来年度以降に大きなビジネスチャンスがあるはず」とみている。

　NECでは、通信事業者向けビジネスを現状の7000億円から近い将来に1兆円まで引き上げる計画。そのうち、「3─4割をNGN関連ビジネスが占めるようになるだろう」（広報関係者）と試算する。今年度は、NGNの研究開発費を前年度と比べ200億円増やす。「すでに案件が出てきている。研究開発費の増額は、サービスプラットフォーム開発を加速するため」としている。

　今年3月にNECとの提携を強化したジュニパーネットワークスでも、「日本でのNGNビジネスを必ず成功させる」（米国本社のアンドリュー・マー・アジアパシフィック・エンタープライズマーケティングディレクター）方針を掲げており、英国の通信事業者であるブリティッシュ・テレコムへの導入実績を生かすようだ。

　日本アバイアは、「NGNでは、1社の製品だけでネットワークシステムを構築するとは限らない。他社製品との互換性を売りにしている当社のIPテレフォニー向けソフトを採用するネットワーク機器メーカーが増える可能性が高い」（加瀬健マーケティング部長）とし、ビジネスチャンスをつかむという。

　F5ネットワークスも「次世代ネットワークの構築は、サービスの充実をいかに図れるかにかかってくる。そのため、“アプリケーションデリバリネットワーキング”を特色とする当社の製品が大いに関係してくる」（米国本社のダン・マット・マーケティング上級副社長）とアピールしている。

　ベンダー各社がNGNビジネスに取り組むのは、ネットワークの今後を左右するシステムになるとの見方が強いためだ。通信事業者への導入実績を生かし、法人向け事業の拡大につなげる狙いもある。通信事業者を取り巻く受注合戦が激化することは確実だ。 佐相彰彦●取材／文