向こう5年間のIT化の方向性示す

　IT戦略本部は6月1日に「重点計画─2006（案）」をまとめ、パブリックコメントの募集に入った。　　 　同本部は、IT新改革戦略を標榜しており、2010年には「いつでも、どこでも、誰でも、ITの恩恵を実感できる社会の実現」を大目標として打ち出している。向こう5年間、IT業界の方向性を左右する力を持つのが、この重点計画だといってよいだろう。

　重点計画では、「IT新改革戦略に掲げられた目標を確実に達成するために、政府が迅速かつ重点的に実施すべき具体的施策」について、ITの構造改革力の追求、IT基盤の整備、世界への発信、というテーマに沿って、整理して提示している。

　目次レベルの表現では、具体像はなかなか見えてこないが、それでも何を目指しているかは伝わってくるので、概要を紹介しておこう。

　全般を対象にした構造改革力の具体的施策では、（1）ITによる医療の構造改革（2）ITを駆使した環境配慮型社会（3）世界に誇れる安全で安心な社会④世界一安全な道路交通社会⑤世界一便利で効率的な電子行政⑥IT経営の確立による企業の競争力強化⑦生涯を通じた豊かな生活、というテーマを掲げた。

　IT基盤の整備では、（1）ユニバーサルデザイン化されたIT社会（2）いつでも、どこでも、何でも、誰でも使えるデジタル・デバイドのないインフラ整備（3）世界一安心できるIT社会④次世代を見据えた人的基盤づくり⑤世界に通用する高度IT人材の育成⑥次世代のIT社会の基盤となる研究開発の推進──を掲げる。

　世界への発信では、（1）国際競争社会における日本のプレゼンスの向上（2）課題解決モデルの提供による国際貢献──をテーマとした。

　具体策で、いくつか注目すべきというか、気になった点をあげてみると、まず「次世代を見据えた人的基盤づくり、世界に通用する高度IT人材の育成」では、「大学院等の高度IT人材育成拠点整備に向けた取り組みを推進するとともに、これらを含め、高度IT人材育成を一層推進するために政府一体となった効果的な施策等を06年8月までにとりまとめる」としている。内閣官房、総務省、文部科学省、経済産業省の共通課題だ。

　IT業界の人材不足は深刻である。たとえば、IPA（情報処理推進機構）の調査によると、組み込みソフトウェア産業における人材不足率は06年調査で49%に達したという。組み込みソフトウェア産業には06年、約19万3000人が働いているが、約9万4000人も不足しているというのである。情報サービス業も同様であろう。「高度」に加えて「量の確保」策も講じて欲しい。

　次世代のIT社会の基盤となる研究開発の推進では、「高セキュリティな次世代OS環境の実現」を掲げ、「07年度の政府内の実証実験に向けて、06年度に高セキュリティ機能を有するOS環境を開発」するとしている。また、「次世代の高度情報検索技術の開発」では、「映像等を含めたあらゆる情報を、簡便、的確かつ安心に検索可能とする研究開発を推進するため、06年度に産官学の推進体制を整備」するとしている。ぜひ、実現して欲しいものだ。 石井成樹●取材／文