新参ジャストの挑戦は成功するか

　ジャストシステム（浮川和宣社長）が今月3日、コンシューマ向けセキュリティソフト市場への参入を表明した。ロシアのセキュリティソフトメーカーであるカスペルスキー・ラブズと5年間のコンシューマ製品の独占販売権を結び、アンチウイルスソフト「カスペルスキー アンチウイルス6.0」と統合型セキュリティソフト「カスペルスキー インターネットセキュリティ6.0」の2モデルを11月17日から販売する。

　カスペルスキー製ソフトは、すでに日本でライフボートが昨年10月から販売しており、ジャストシステムは最新バージョンから発売する。目標本数は発売後1年間で25万本。市場シェア5％を狙うという。今後は法人のセキュリティ市場への進出も計画する。浮川社長は、「新しい脅威から日本のPC環境を守るため世界最高峰のセキュリティソフトを提供したい」と参入の理由を語った。

　25万本の販売、シェア5％獲り──。その達成は競合ひしめき合う市場のなかで可能か。「BCNランキング」直近週次データ（9月25日─10月1日）のセキュリティソフト部門の販売本数シェアは、シマンテックが41.1％、トレンドマイクロが32.6％、ソースネクストが18.1％。3社合計で9割以上のシェアを占める。3社が占めるシェアはここ2─3年ほぼ変わっていない。3社寡占と呼べる市場で、新規参入したメーカーのシェアは伸び悩むケースがこれまで多かった。ただ、成功の可能性がないわけでもない。3位のソースネクストは、1980円という低価格、更新費用0円という画期的なアイディアを武器に、シマンテック、トレンドマイクロといった2強に割って入ることに成功した。戦略によって後発でも十分シェア獲得が見込めるはずだ。

　ジャストは、製品発表の際これといった販売戦略を打ち出してはいない。「淡々と普及活動をしていればシェアは十分とれる」と浮川社長は話すだけにとどまった。競合他社との差別化についても「1にも2にも性能」とあくまでも「性能ありき」と主張した。

　たしかにカスペルスキーのエンジンは検知率など第三者機関からの評判は高いが、「性能」だけでは消費者への訴求ポイントとしては乏しいだろう。セキュリティベンダー各社はどこも検知率ナンバーワン、高機能などをうたう。各社と同じように性能だけを訴えても、逆に差別化できず、埋もれてしまう恐れもある。

　ジャストは、「一太郎」などの登録ユーザー550万人の一部のユーザーに対し、「DMの中に評価版を入れ、積極的にプロモーション活動に取り組む」という。この顧客550万人が販促活動にどれくらいレスポンスを返すかは未知数だ。ただ、もし顧客550万人のうち5％でも製品を購入したら、それだけで27万5000ユーザーを獲得し、目標数値を上回ることになる。

　一太郎などのオフィスソフトで築いたブランド力と550万人という顧客データベースは国産ソフトメーカーの雄であるジャストの強み。どう生かすかでシェア5％の確保は十分可能だろう。むしろ、「控えめな目標数値だった」となる可能性も秘めている。