PCメーカーとしての責任

　ソニーは先月24日、PC用電池の発火問題で初めて記者会見を開き、供給先であるPCメーカーに対して発火の可能性がある電池パックを回収・交換するプログラムを正式に発表した。対象は約350万個。すでに交換を始めていたデル、アップルコンピュータ、レノボを含めれば約960万個にものぼる。

　一連の電池問題でソニーが負担する費用は約510億円。ソニーの昨年度（2006年3月期）連結純利益の約40％に匹敵する数字で、事態の深刻さを物語っている。

　ソニーは今回、早急に電池問題に終止符を打つため、そして後手後手に回った対策のまずさを払拭するために、公の場での発表に踏み切り、発火の可能性が極めて低い電池も回収対象に含めて事態の収束を急いだ格好だ。発表の際、問題となった電池セルの事業を担当していた中川裕・執行役副社長セミコンダクタ＆コンポーネントグループ担当が「これで終わりにしたい」と漏らした言葉に、その気持ちが垣間見えた。

　電池メーカーの立場としてソニーが行った措置は当然だ。ソニーによると、今回の発火原因はPC用バッテリーパックの中に格納する「円筒型リチウムイオンバッテリーセル」の製造段階で、正極と負極の特定部位間に金属の微粒子が入ってしまったことにあったようだ。電池セルの供給方法にはさまざまな方式があり、「電池セルから電池パックをPCメーカーが製造する場合に不具合が生じる場合もある」（ソニー）という。発火原因のすべてがソニー製電池セルであるとは特定できない。だが、電池セルが主要因であることは間違いない。

　ソニー製電池セルの供給を受けたPCメーカー担当者は、「供給を受けている部品は、電池に限らず当然ながら念入りなチェック体制を敷いている。しかし、今回は電池内部の構造に問題があった。過度にチェックをすれば電池自体が老朽化する。（発火事故を）防ぎようがなかった」と説明する。

　ただ、今回の回収騒ぎでは電池メーカーのソニーだけにフォーカスがあたる今の状況に違和感を覚える。たとえ、ソニー製電池セルが問題であっても、ユーザーが購入したのはPCであり、ユーザーからみれば責任は完成品を製造・販売したPCメーカーにあると思うのは当然だ。

　ある業界団体関係者は、「どんな理由があるにせよ、責任の一端はPCメーカーにもある。ユーザーに対しての説明・謝罪の責任が軽視されているのではないか」と指摘する。

　電子情報技術産業協会（JEITA）は、一連の電池問題でPCの安全に対する不安感がユーザーに広まり、PCの販売に影響が出ると判断。「ノートPCリチウムイオン電池安全利用特別委員会」を設置した。エンドユーザー向けの情報提供を充実させていく考えだ。

　今後、信用失墜、ビジネス機会の損失を理由に、PCメーカーがソニーに対して損害賠償を求める可能性がある。電池メーカーのソニーとPCメーカーの争いはしばらく続くだろう。ただ、PCメーカーは、ソニーの責任を追及するだけでなく、エンドユーザーに対してのサポートを今以上に徹底する責任がある。