OEM供給拡大と販売網改善が柱

　富士ゼロックスの100％子会社、富士ゼロックスプリンティングシステムズ（FXPS）が、来年4月1日に本体へ再統合される。FXPSは、単機能を中心としたオフィス向けレーザープリンタで、OEM供給を含めて「シェア世界1」を目指すために設立された。昨年度（2006年3月期）の売上高は単体で約1700億円。設立前のレーザープリンタ事業全体に比べ、2倍以上に成長。「ナンバー1は射程圏内」と、堀江潔社長は次の挑戦を口にしていただけに、突然の再統合に驚かされた。

　富士ゼロックスの10月26日付・発表資料では、再統合の理由を「経営資源を集中し、機動的かつスピーディな経営の確立を目的とする」とある。この文面は、FXPSの分社化の際にも、同じ記述があった。この資料から再統合の本質を推し量るのは不可能だろう。

　富士ゼロックス広報宣伝部によれば、再統合には、大きく2つの理由があるという。FXPSはレーザープリンタ販売を拡大することに加え、OEM供給先を増やすことを「ミッション」としていた。丸4年、「個別製品のOEMで実績は出た」（中島稔・広報グループ長）が、「ロングセラー」プリンタへのOEMが伸び悩んだ。また、「自社ブランド『DocuPrint（ドキュプリント）』の国内販売の成果が十分でない」（同）ことをあげる。競合がひしめくなか、販売体制の見直しを強いられたようである。

　FXPSのブランドには「Docuprint」と「Phaser（フェイザー）」のほか、NECにOEM供給している「MultiWriter（マルチライタ）」が知られる。最近はOEM供給先の奪い合いが激化しているようだ。

　オフィス向けプリンタに対する企業側の要求が高くなり、印刷速度やスペースなど、適所に配置できる多機能な製品群へのニーズが高まっている。パソコンを開発・販売する大手ITメーカーやプリンタメーカーでさえ、製品群を迅速に揃えるため、OEMに頼る傾向が出てきた。富士ゼロックスは、再統合で、開発体制だけでなく、企画・提案を共同で実施。製品化までの期間を短縮して、こうしたニーズに迅速に応えていく方針だ。

　一方、レーザープリンタの国内販売に向けた戦略について、FXPSの堀江社長はBCNの取材に以前、こう回答していた。「デジタル複写機（MFP）は『自己完結型』。プリンタは『非自己完結型』で、パートナーを積極的に増やす」。ただ、SIerなどと連携するうえで、富士ゼロックスの直販部隊との摩擦が生じた。堀江社長は「バッティングした場合は、直販部隊に退いてもらう」と、パートナー優先の立場を鮮明にしていた。

　ところが、今回の再統合でこの体制も見直される。富士ゼロックスは昨年8月、34の販売会社を完全子会社化。営業・保守を一体化したサービスを提供する体制に改め、販売会社の権限を強化した。この販売会社を中心に、今後はFXPS開発のプリンタとMFPを一緒に拡販する体制になる。

　ネットワーク化が進む企業の要求に応え、両機を一体販売する必要性は高まるばかりで、FXPSの再統合は自明の理だったといえる。