日本ユニシス、NIer買収の狙い

　三井物産グループの日本ユニシスが、4月12日までにNIerであるネットマークスの株式や新株予約権をTOB（株式公開買い付け）で取得する予定だ。ネットマークスを傘下に収めることで、自社の強固なSIをベースにNI（ネットワークインテグレーション）を強化する。コンピュータとネットワークを融合させたシステム・サービスを提供できるベンダーがマーケットで主導権を握るとの見方が強いなか、今回のTOBは日本ユニシスにとって成長戦略の重要不可欠な要素というわけだが、果たして狙いはそれだけなのだろうか。

　これは、系列のグループ会社、もしくは親会社の三井物産に挑戦状を叩きつけたのではないかともとれる。というのも、日本ユニシスが都内某所で開いた記者懇親会の席で、籾井勝人社長が意味深長な例え話をしたためだ。

　「“家の饅頭”はいつでも食えるからね」。ネットマークスのTOBに関する報道陣の質問に対して、籾井社長はこう切り出した。ここでの“家の饅頭”というのは、ネクストコムと三井情報開発の合併で誕生した三井情報を指している。三井情報が三井物産グループとして同じ系列にあることから、必要であれば、いつでも統合できるということだ。しかも、「“他人の饅頭”を自由に確保できる環境であるならば、もらわない手はない」と発言。これは、住友電気工業がネットマークス株を売りに出している状況のなか、買収しなければチャンスを逃すと判断したことを匂わせる。さらには、「“家の饅頭”の善し悪しを知っているため、食うべきなのか、食わぬべきかの判断は、すぐに分かる」とも。現段階では、日本ユニシスにとって三井物産のグループ会社との統合や連携強化による事業拡大が、あまりメリットをもたらさないと示唆しているような発言だ。

　統合については、三井情報側でも全く考えていないようだ。昨年末、ネクストコムと三井情報開発が共同で開催した合併発表の記者会見では、日本ユニシスとの競合関係や、三井物産グループとして日本ユニシスと統合する方向性などが焦点となった。両社の合併を三井物産が進めたものだからだ。これらの質問に対して、旧・三井情報開発社長だった増田潤逸氏（現・三井情報社長）は「グループ会社同士で競争するよりも協業という道を選びたいが、時には競合する可能性もある。競合しないためには統合の方向もあるが、現段階では全くそのような話が出ていない」と返答。しかも、SIが主力事業の三井情報開発とネットワークに強いネクストコムがタッグを組むことで「“SIとNIの融合”を早急に実現できる」（増田社長）と、まさに日本ユニシスが思い描く将来像と同程度のコンセプトを掲げた。

　親会社と真っ向から勝負するというのは、日本ユニシスの真意ではないかもしれない。しかし、籾井社長は“饅頭”という表現を使いながら、同社が三井物産グループ内で確固たる地位を一段と築けることをアピールしているのではないだろうか。三井物産グループの会社間で競合するように親会社が仕組んだ場合でも、日本ユニシスは絶対に負けない姿勢を示したことに間違いはない。