SIerの大興電子通信（高橋正道社長）は、今年度からの中期経営計画で利益率向上に重点を置く。高い収益性が見込めるアウトソーシング事業などストックビジネスの拡大やパッケージソフトの活用によるSI事業の効率化などを柱に据えることで利益率を高める。ここ数年で利益を着実に出せる体制が整ってきたものの、利益率は依然として低い状態にある。2010年3月期までの経営計画では連結営業利益率2％、将来的には5％まで高める。

　今年4月からデータセンターの規模を約2倍に拡張し、アウトソーシング事業の企画立案を手がける専門部門を新設するなど、ストックビジネスの拡大に努める。同時に自社で培ってきた業種・業務ノウハウを生かしたパッケージソフトやテンプレートを増やすなどして、業種対応の効率化に力を注ぐ。必要に応じて他社のパッケージソフトも使うことで納期短縮やコスト削減を図る。

　ストックビジネスの中核部分を占めるアウトソーシング需要は高まっており、同社においても従来のデータセンターでは手狭になっていた。対応しきれない受注は資本関係のある富士通グループのデータセンター事業部門に委託するなどしていたが、このことが「結果的に利益の源泉を逃す」（高橋社長）ことにつながっていた。

　また、顧客への営業の段階で、運用アウトソーシングまで含めた企画・提案が必ずしも十分できていない部分もあった。新設したアウトソーシング専門部門では、営業の手法の段階から見直しをかける。上流工程の設計から開発、運用まで一貫した提案が行えるようにすることで事業拡大を図る。

　ストックビジネスの中身も変える。収益性が低いハードウェア保守サービスへの依存度を下げ、付加価値の高い運用アウトソーシングサービスやビジネスプロセスアウトソーシング（BPO）サービスなどへのシフトを急ぐ。

　直近の連結売上高全体に占めるストックビジネスの比率はおよそ3割で、内訳はハード保守系が約1割、運用サービス系が約2割の構成。経営計画ではハード保守の構成比は現状維持とし、運用サービス系の比率を約3割に高める。

　これにより売上高全体に占めるストックビジネスの比率は計約4割に増え、収益力の安定化につながることが期待される。

　ここ数年間で、2度の大きなリストラを経て人員コストの削減や幹部の若返りを図ってきた。「着実に利益が出せるようになった」ものの営業利益は1％前後の水準にとどまっている。今年度からの3か年経営計画では、まず営業利益率2％への拡大を目指し、将来的には連結売上高500億円、営業利益率5％を目指す。