大手SIerの決算は、産業界の旺盛なIT投資を受けて好業績が目立った。情報サービス業界トップのNTTデータは過去最高の連結売上高1兆円を達成。野村総合研究所（NRI）も連結売上高3000億円を大きく上回った。同じく過去最高である。一方で、単価下落が進むハードウェアに足を引っ張られたSIerもあり、収益力を高めるにはより一層のソフト・サービスビジネスへの移行が必要であることが鮮明になった。（安藤章司●取材／文）

ハードビジネスは続落

　大手SIerの決算は、産業界の旺盛なIT投資を受けて好業績が目立った。情報サービス業界トップのNTTデータは過去最高の連結売上高1兆円を達成。野村総合研究所（NRI）も連結売上高3000億円を大きく上回った。同じく過去最高である。一方で、単価下落が進むハードウェアに足を引っ張られたSIerもあり、収益力を高めるにはより一層のソフト・サービスビジネスへの移行が必要であることが鮮明になった。

　NTTデータの昨年度（2007年3月期）連結売上高は前年度比15.2％増の1兆449億円、営業利益は同92.6％増の902億円と、3か年中期経営計画で掲げてきた“連結売上高1兆円、営業利益750億円”を大幅に上回る好業績を叩き出した。

　公共、金融、一般企業の主要3分野がバランスよく伸び、かつ大きな不採算案件を発生させなかったことが増収増益に結びついた。従来“弱い”と指摘されてきた一般法人向けの売上高を前年度比46％増と大幅に伸ばし、かつ金融向けを約18％増、公共向けを約5％とそれぞれ伸ばした。

　今年度からの3か年の経営計画では増収増益を維持しながら、「営業利益率10％を目指す」（浜口友一社長）と収益重視の方針を示す。昨年度の営業利益率は8.6％と業界水準を上回るものの、高収益モデルで先行するNRIの営業利益率13.6％には及ばない。収益力を高めるビジネスモデルへの変革に力を入れる。

　NRIの昨年度連結売上高は初めて3000億円の大台を突破した。NTTデータの1兆円超とは差があるものの、前年度比12.9％増の3225億円と過去最高を更新。営業利益も同20.4％増の438億円を記録した。野村ホールディングスやセブン＆アイホールディングスなど大口優良顧客からの受注が順調に増えたことがプラスに働いた。

　SIなど開発案件は前年度比21.4％増の1357億円と大幅に伸びたが、高い収益力が見込める運用サービス案件も前年度比8.6％増の1265億円に伸びた。

　「運用サービスは年率3％増が巡航速度」（藤沼彰久社長）とみてきただけに、予想以上の引き合いの多さに驚きを隠さない。

　需要増に応えるためデータセンターを新設するなどハードウェア関連の設備投資は順調に増えているものの、ソフトウェアに関しては開発や運用など実ビジネスに人手を取られてしまい「思うように投資できない」のが実状だという。昨年度は約300億円の設備投資を行ったが、うち3分の2近くをデータセンターなどハードウェアへの投資が占めた。今後はソフトウェアへの投資比率を高めることで競争力を高める。

　一方、価格下落が続くハードウェア販売の売上高構成比が高いSIerは苦戦を強いられた。富士通ビジネスシステム（FJB）の連結売上高もハードウェアの減少に歯止めが利かず前年度比2.3％減の1586億円だった。「ソフト・サービスに注力」（鈴木國明社長）したことで営業利益は6.7％増えた。

　JBCCホールディングスの昨年度連結売上高は主力のソリューションビジネスが好調で、これにM&Aも加わったことで前年度比13.7％増の981億円だったが、ハードウェア販売は1.3％減の342億円。パソコン販売だけを抜き出してみると2割減少した。今年度はハイエンドのサーバーやストレージの販売をさらに増やすことで「パソコンの落ち込みをカバーする」（石黒和義社長）考えを示す。