名古屋を本拠地とするパソコン専門店のグッドウィルは、アロシステムと資本・業務に関して、包括的に提携した。起死回生を図るため、大手家電量販店がまねのできないビジネスモデルを創造することを狙いとする戦略だ。

■粗利率2倍以上を維持

　今回の提携により、両社は共同購買や生産統合、情報交換などを行っていく。

　共同購買では、組立PC用パーツの一括仕入れで原価削減を果たした。その成果をパーツやパソコンの店頭価格引き下げにつなげた。生産面では、グッドウィルのホワイトボックス「レガリア」をアロシステムが一括で委託。大量発注によるコスト削減で、高性能・低価格のショップブランドパソコンを販売できる体制を整えた。情報交換という点では、グッドウィルによるパソコンや周辺機器などの製品知識、アロシステムによる自作パソコンの販売ノウハウなどを組み合わせ、パソコン専門店としての新しい接客のあり方を追求していく。ウェブ販売ではアロシステムの通販システムをグッドウィルが活用することで、運営コストの削減や製品拡販を図る。

　また、各地域の店舗統廃合を進めている。今後は、中部地域と沖縄をグッドウィル、それ以外の地域をアロシステムのショップで展開していく。当面はパソコン需要に比べてショップ数が少ないといわれている中部地域での出店を重視。首都圏の大手量販店が苦戦している地域との見方が強いだけに、両社のタッグによって同地域でトップが狙える可能性を秘めている。

　さらに、資本面ではグッドウィルの資本増強を目的に、アロシステムや関連会社、ソリューションデザイン運営の投資事業有限責任組合愛知中小企業再生ファンドを引受先として3億円の第三者割当増資を実施。これにより、グッドウィルの経営安定化を図ることになる。

　提携による効果について、グッドウィルの田中満祐社長は「現段階で粗利率が前年度と比べて2倍以上を実現している。そのため、今年度（2007年9月期）は大きな利益確保が見込める」としている。

■オリジナルPCが70％に

　提携の経緯は、昨年夏頃にさかのぼる。グッドウィルがアロシステムに対してアライアンスの話を持ちかけた。グッドウィルは、パソコン生産のリソースが少なかったことから自社ブランドに対するパソコン需要に供給が間に合わず、販売機会を逃すケースが増えていた。一方、アロシステムはホワイトボックスや組立PC用パーツの販売だけでなく、製品カテゴリーの拡充を視野に入れており、パソコン周辺機器の品揃えや販売ノウハウを持ちたいと考えていた。課題を払拭するには、アライアンスを組むことが最適と判断。「昨年10月から徐々に協業するようになった」（田中社長）。協業から約6か月が経過し、今年3月22日に本格的な提携に至ったというわけだ。

　両社の提携により、ビジネス面で競合他社の注目を集めそうなのは、多くのショップがメイン商材に位置づけているショップブランドのオリジナルパソコンだ。グッドウィルにとっては、スタンダードな機能搭載のホワイトボックスをベースとしたBTO（受注生産方式）による販売体制を、アロシステムとの提携で安定的なビジネスに成長させたことになる。しかも、最も安いモデルで3万円以下を実現。パソコン中級者をメインに、自分に適した機能だけを搭載して購入することが主流になりつつあるなか、グッドウィルの“自作パソコン専門店”としての知名度が一段と高まりそうだ。田中社長は、「昨年度は、パソコンの販売でメーカーブランドが主流を占めてきた。しかし、今では自社ブランドが70％を占めるようになった」と自信をみせる。

■サポート・サービスで差別化

　両社が新しいビジネスモデルを創造するために力を入れるのはサポート・サービスだ。パソコン設定のための出張やショップ持ち込みによる修理などに加え、さまざまなサービスのメニュー化を進める。

　大手家電量販店がパソコンを薄利多売の商材に位置づけ、メーカーブランドを中心に大量販売を加速させている一方、「“街の電器屋”のように、パソコンに関してユーザーが困ったことを気軽に聞けて、要望に何でも対応するショップを目指す。これにより、パソコンを中心とした収益モデルを追求していく」としている。

　家電量販店やパソコン専門店などの小売業界では、大手量販店による郊外を中心とした大型ショップ出店による攻勢が激しいことから、中堅規模の量販店やパソコン専門店は厳しい局面にある。しかも、低価格攻勢やポイント還元のアピール合戦はさらに加熱。同じ商品をいかに低価格で売るかという販売形態では、体力に勝る大手量販店が優位の構図が浮かび上がる。こうした競争に巻き込まれないためには、他店にはない品揃えやサービスが差別化要素となる。

　田中社長は、「パソコンに詳しい人材が多く揃っている」ことを強みと捉えている。他社にまねできないサービスをいかに創造するかが成長路線のカギを握る。