付加価値化への転換が急務

　SIerのハードウェア事業の縮小に歯止めがかからない。昨年度（2007年3月期）は新OSに対する様子見もあり、パソコン事業の売り上げが軒並み縮小した。JBCCホールディングスは前年度比約2割減、富士通ビジネスシステム（FJB）でも約1割減った。それだけでなく、ローエンドのサーバーやネットワーク機器の価格が下落するなどしてハード事業全体が縮小する傾向が続いている。

　独自のパッケージソフトを開発するなど、主要SIerはソフト・サービスの拡充に力を入れることで必死に落ち込みをカバーしてきた。こうした取り組みが功を奏してソフト・サービスは堅調に伸び、収益の柱に育っている。だが一方で、従来型のソフト・サービス一本槍の方策で事業拡大を続けられるかどうかは疑わしい。

　特定のハードに強いということはSIerとして重要な差別化要素である。つまり、ハイエンドのマシンで運用する必然性がある重要なシステム、付加価値の高いシステムを売り込めるSIerは、それだけ魅力的なソフト・サービスをつくりだせていると言えるからだ。売る力が高まれば、技術やマーケティング面でのメーカーからの支援も期待できる。

　もともとソフト開発を主体とする開発系のSIerはともかく、メーカーとの結びつきが強いSIerは危機感を募らせる。「ハードの落ち込みを放っておくわけにはいかない」（FJBの鈴木國明社長）、「ローエンド製品の価格下落をハイエンド製品でどうカバーするかが課題」（JBCCホールディングスの石黒和義社長）などの声が聞こえてくる。

　ではどうすればいいのか──。競争が激しさを増すなか、ローエンド製品の単価を上げることは事実上不可能だ。ならばハイエンド製品をより多く販売するしか方法はなかろう。ローエンド製品は仕入れや配送の一元化を図るなどローコストオペレーションを徹底し、同時にハイエンド製品を意識したソフト・サービスの体系を別途構築する。後者は多少時間がかかるかもしれないが、縮小傾向が続くハードビジネスをプラスへと転換させるには粘り強い取り組みが欠かせない。

　例えば、付加価値の高いブレードサーバーやストレージ、ディザスタリカバリ（DR、災害復旧）の仕組みなど、取り組むべき対象はある。ブレードを得意とする日立製作所のグループ会社・日立情報システムズでは、「仮想化技術と相性のいいブレードをベースにしたオンデマンドサービスの拡充」（矢島章夫・執行役常務）を視野に入れ、FJBも「ブレードとソフト・サービスの組み合わせによる拡販を強化する」（鈴木社長）と、付加価値化への取り組みに力を入れる。

　JBCCグループや伊藤忠テクノソリューションズ（CTC）は、付加価値ディストリビューション事業に力を入れる。前者はIBM、後者はサン・マイクロシステムズの製品ノウハウが豊富で、それぞれの強みを生かした付加価値を販売パートナーに提供することでハードの取扱量を増やす考えだ。

　ローエンド製品の販売効率の向上と、ハイエンド製品を伴うソフト・サービスづくりの両輪を十分に機能させることがハード事業縮小の底打ちにつながる。