販社が動くかどうかがカギ

　「SMB（中堅・中小企業）マーケットでトップシェアを目指す」──。ERP（統合基幹業務システム）「EXPLANNER」の新製品と新チャネル網を駆使して、強力なライバルがひしめく国内市場で、2008年度（09年3月期）には首位に立つと、記者会見で“宣言”したNEC。ライバルの富士通、住商情報システムのほか、NECの主力販社・大塚商会などを抜き去ることが前提条件であることからすれば、けっして容易なことではないはず。その自信はどこから出てくるのか。

　NEC販社は、「EXPLANNER」の製品改良や内部統制への対応の遅れなどに苛立ち、それぞれに自社開発したERPや外資系ERPなどを担いできた経緯がある。このような動きを受けて、NECは一度離れた販社を引き戻そうと考えたのか、昨年5月、「EXPLANNER宣言」を打ち出した。しかし、同じ頃、「時すでに遅し」と嘆く販社担当者の声をよく耳にした。内部統制強化でERPの存在が注目され始めた頃だったからだ。「提案期間を含めれば、最も重要な時期に製品がなかった」という状況では、見込み客を逃していた可能性があった。

　それでも1年前、NECの担当者は「対応が遅れたことは事実。しかし、急追できるまでに体制を整える」と強気な姿勢をみせていた。今回の会見では、体制整備の第2弾「EXPLANNER宣言Ⅱ」を提示し、販売・サポート体制の整備や中国での事業化、販社を60社から100社に増やすなど、ライバルの追撃に本腰を入れる気配が見えた。

　例えば、NEC製以外のERPを多数取り扱う直系販社のNECネクサソリューションズは、4月1日付で「EXPLANNER」専用の100人体制の営業・サポート組織をつくった。同社は「SAP Business─One」や「GRANDIT」、自社製の「NEXERP」を提供している。他社製品はそのまま販売するが、「NEXERPの後継としてEXPLANNER／Aiを売る」とし、自社製品から切り替える形でEXPLANNERにシフトさせる拡販戦略に打って出る。

　製品面では、これまでに製造、流通を中心に同シリーズ7種類、パートナーの連携パッケージが43種類も揃った。シリーズ体系をみると、「EXPLANNER」にも光明がさしそうだ。例えば、今回新たに加えた流通業のなかでも「青果市場向け」や「鋼材卸2次加工業向け」など、IT化が遅れている業界向けに“ニッチ市場”を攻略するため、パートナーの業界特化製品を取り込んだ。

　同社のSMB向けERPシェアは、国内の企業数で4％ほどを占め、上位とはかなり開きがある。これを09年度（10年3月期）までに20％に引き上げ、ハードウェア販売やSIを含めて、09年度末までの3年間に1200億円を売り上げるというのが“青写真”だ。

　「シェアを上げれば、新たなビジネスチャンスに結びつく」と、岩波利光・執行役員常務。トップに君臨する富士通のGLOVIAを押さえ、栄冠を勝ち取るための“人海戦術”ともいえる策。日立製作所と同様に、直系、傍系販社が組織的に動くかどうかが、成否を分けそうだ。