マイクロソフト版ウェブ2.0を推進

　マイクロソフト版ウェブ2・0を推進するコンソーシアム「Wipse」（ワイプス、松倉哲会長＝東証コンピュータシステム社長）が、6月27日に発足した。マイクロソフトのプラットフォームを活用してさまざまなサービスを組み合わせる技術の普及啓蒙、ビジネスの拡大を狙う団体だ。Wipseは「Windows＋Services（ウィンドウズプラスサービス）」の頭文字をとったネーミングだ。

　ネット上でサービスを組み合わせて利便性を高めるウェブ2・0方式は、いまや有力プレーヤーによって急速に発展している。検索サービス大手のグーグルは地図や電子メール、表計算、ワープロなどを次々とサービス化。ソフトウェアをサービスとして提供するSaaS型オンデマンドサービスではセールスフォース・ドットコムが大躍進している。クライアント向けのリッチなユーザーインターフェースではアドビシステムズが先行する。

　実はマイクロソフトでもこうした潮流に対抗する技術を次々と打ち出している。対グーグルではLive（ライブ）、対アドビではSilverlight（シルバーライト）、またXMLベースの文書フォーマットで勢力を強めるODF（オープンドキュメントフォーマット）の対抗馬としてOpen XML（オープンXML）といった具合だ。ただ、先行するプレーヤーに比べて知名度の点で若干後れをとっている感は否めない。

　そこで登場したのがNECや富士通、日本ヒューレット・パッカード、日立ソフトウェアエンジニアリングなど9社の大手ITベンダーが発起人になって発足したWipseだ。各技術の作業部会を設け、技術の普及啓蒙やエンジニアの育成などに努める。

　Liveではグーグルと同様、インターフェースの仕様を公開している。これと接続して、より利便性の高いサービス開発を研究する。Silverlightではリッチインターネットアプリケーション（RIA）開発の技術支援。Open XMLは最新版のOfficeですでに採用されており、Officeとの連携アプリケーションの開発を手がけるベンダーなどが集う予定だ。

　マイクロソフトにとってみれば心強い援軍。「技術情報を積極的に開示する」（マイクロソフトの加治佐俊一・業務執行役員最高技術責任者）ことでコンソーシアムの振興を後押しする。Wipse側も「技術面でマイクロソフトと太いパイプを持つ」（松倉会長）ことで、コンソーシアムに参加するメリットを増幅させる。今後1年間で会員企業を約100社に増やす。かつ会員企業全体で前述の技術などを採り入れたアプリケーションを今後3年程度で、200種類ほど開発する目標を立てる。

　すでに投入したVistaやOfficeに続き、マイクロソフトは次期サーバーOSの完成も間近に控える。プラットフォームが大きく変わり、同時に競合激しいウェブ2・0型のサービスも拡充しなければならない正念場にきている。サービス領域でシェアを伸ばすには、Wipseの活動に多くのベンダー参加し、盛り上がりを実現できるかどうかにかかっている。