グループウェアを家電量販店で販売

　サイボウズが個人向けソフトメーカーのジャングルと業務提携し、家電量販店でのグループウェア販売に乗り出した。「サイボウズOffice6基本セットパッケージ版（10ユーザー）」として7月20日から発売する。家電量販店でのパッケージ販売はサイボウズにとって初めての試み。しかもショップ商材としては馴染みの薄いグループウェアだけに、思い切ったチャレンジだ。

　サイボウズの青野慶久社長は、家電量販店経由で販売する理由をこう語る。「国内グループウェア市場は400億円規模。ここ数年、この市場規模はほとんど変化していない。何とかユーザーのすそ野を広げていきたい」。同社がターゲットとするユーザーはSMB（中堅・中小企業）が中心。しかし、10人以下の企業が同社製品を導入する比率は全体の17％という。「導入が進んでいないといわざるを得ない」と打ち明ける。「国内の事業所数は約570万ある。そのうち、10人以下の事業所が占める割合は80％以上。市場は大きい」。家電量販店という新しい販路で導入比率アップにつなげるというわけだ。

　主力のウェブによるダウンロード販売と比べれば、パッケージ販売がコスト高になるのは間違いない。しかも、売れなければ在庫を抱えるというリスクも負うことになる。利益を圧迫する危険性を秘めているわけだ。こうした懸念について青野社長は、「確かに、これまでのビジネスモデルよりも利益率が低くなるがその差は微々たるものに過ぎない」とみる。さらにこう続ける。「コスト削減にもつながる。これまで、電車の中吊り広告をはじめ積極的なプロモーション活動を行ってきたが、10人以下の企業に訴求するという点では効果が今ひとつだった。また、専属の営業担当者を配置すれば人件費がかさむ。これまでの販売方法ではアプローチが難しかったという課題を、家電量販店経由の販売で解決できる」と自信をみせる。

　店頭販売が主体のパソコンソフト市場は成熟気味で、年を追うごとに縮小傾向をたどっている。そのため、ソフト売り場には小さなスペースしか当てていない家電量販店も少なくない。こうした状況下で、あえてパッケージ販売を行う意味があるのか。業務提携により家電量販店への販売やサポートなどを担当することになったジャングルの高田晃子社長は、次のように語る。「家電量販店がソフトコーナーを縮小したのは、売れる商材が少ないため。だから、人気のある商材なら売り場で大きなスペースを確保できる。会計ソフトなど個人事業主や小企業を対象としたソフトが良い例だ。しかも、今回の取り組みは新しいニーズを創造するもの。家電量販店のソフト販売の活性化を図るという点で、大いに意義がある」。

　店頭販売の展開についてサイボウズの青野社長は、「このビジネスモデルが確立すれば、近い将来には（サイボウズガルーンなど）ほかの当社製品を店頭で販売する計画」としている。店頭でのパッケージ販売が厳しいことから、ダウンロード販売やASPサービスを事業の柱に育て上げようと力を注ぐソフトメーカーが多い。そんななか、時代に逆行するとも受け取れるサイボウズの決断は、成功するのか。注目したいところだ。