SOA、SaaSを足がかりに成長目指す

　ISVの国際競争が激化している。SOA（サービス指向アーキテクチャ）やSaaS（ソフトウェアのサービス化）など新しいITプラットフォームが急速に普及。これを追い風に国境を越えて自らの商品を売り込む動きが活発化している。

　SOAベースのミドルウェアでシェア拡大を狙うIBMや、SaaSで台頭してきたセールスフォース・ドットコムなどは、パートナー施策の強化や新しいプラットフォームを次々に打ち出している。IBMはISV向けのパートナー施策のなかで、SOA対応を強く奨励し、グローバル規模での支援策を強化。セールスフォースもSaaSプラットフォームのApex（エイペックス）をISVに開放し、オンラインで全世界のユーザーにアプリケーションソフトを届けられるインフラを整備してきた。

　SOAやSaaSも根底にある基礎的な接続技術はXMLウェブサービスで、相互接続性が高い。ISVは大手ベンダーとの接続性を高めることで、自らの存在を顧客にアピール。グローバルでのシェア拡大に弾みをつけようと必死だ。

　日本IBMでは、「ここにきて海外ISVからの引き合いが強まっている」（古長由里子・ISV＆デベロッパー事業推進部長）という。新しいプラットフォームに迅速に対応した海外ISVが日本進出を加速させているのだ。日本で知名度がそれほど高くなくても、IBMに認められたビジネスパートナーであることをアピールできれば信用度が増す。

　セールスフォースではApexに対応したアプリケーションの登録件数が急増しており、今年度（08年1月期）末までには米国だけで1000件に達する見通しだ。SaaSの波に乗って成長を目指すベンチャー企業が多いという。米国発のISVは比較的進出しやすい欧州に向かう動きが目立つが、その次のターゲットとして、「日本市場への進出が増えることも十分に考えられる」（セールスフォース日本法人の榎隆司・執行役員）と予測する。

　SaaSはオンデマンド型のサービスであるため、従来のパッケージソフトに比べて参入障壁が低い。海外から大挙して有力ISVが押し寄せてくる可能性もある。

　国内でもSaaSやSOAの波に乗る動きが活発化している。国産ERPベンダーのガイアはこの7月から自社製品のSaaS化を順次進めており、セールスフォースとの連携に力を入れる。既存の売り切り型の製品はSIerなどの販売パートナーを経由して売れることが多かったが、SaaS型製品では「セールスフォースが持つ販売チャネルも活用する」（中道徹社長）と、新たな販売ルートでの拡販に期待を寄せる。XML関連のミドルウェア開発に力を入れるジャストシステムはIBMパートナーであるメリットを活用して世界進出に力を入れる。

　プラットフォームのSOA化、SaaS化はISVにとって大きなビジネスチャンスになりうる。だが一方で、世界中のISVが同じオンデマンド型の土俵の上で競争することを意味しており、国内ISVにとってはもろ刃の剣。対応が後手に回れば海外勢に圧倒される危険性もある。国内市場に安住するのではなく、海外へいち早く攻め入ることが、攻め込まれるリスクの軽減につながる。