あの手この手で効果探る

　マイクロソフト（ダレン・ヒューストン社長）は、国内中堅中小企業（SMB）のIT化を促進するため、昨年度（2007年6月期）末から、自社ソフトウェアの浸透を狙い“どぶ板キャンペーン”とも呼べるあの手この手の策を繰り出している。同社によれば、国内SMBのIT化率（パソコン稼働台数）は欧米の半分、南アメリカのベネズエラ並みという。「このままでは、欧米並みになるまで10年はかかる」（森上寿生・業務執行役員）と、日本独自の戦略を含め、事態の打開を図ろうと必死だ。

　今年6月、日本法人の発案で認定パートナーからOffice製品を購入した場合に、購入金額の30－50％の同社製品が買えるギフト券をキックバックするキャンペーンを実施した。1か月間というトライアル期間での実施だったが、約50社が同キャンペーンを利用してソフトを購入した。同社は、「一定の効果が出た」として、9月から開始する複数の「IT活用応援キャンペーン」でも、内部統制対応でニーズが高まっているメールサーバーとグループウェアにキックバックを適用。購入ライセンスに応じ最大80万円のギフト券が得られるようにし、期間を来年3月までに延長している。

　同応援キャンペーンでは、認定パートナーだけに「クローズド」で提供していた初回購入ライセンスの数量を引き下げた。12月までの期間限定で、1サーバー当たりのオープンライセンスの初回購入数量を「5」から「3」に下げ、「小規模オフィスでも購入しやすくした」という。「日本の企業には売りにくい体系」という認定パートナーの苦言を受け、大胆な改革を断行した。このライセンス引き下げ策は、世界の同社法人のうち、カナダと北欧でパイロット的に行ったことがある。それによると、1か国当たりのライセンス販売が約10％増えたそうだ。これに類する成果が上がれば「延長もあり得る」（森上・業務執行役員）と、事業の継続を示唆する。

　日本のIT化が進まないのは、SMBの「ITリテラシーが低いため」というのが定説だ。そこで今回は、経営課題をIT化で解決する「IT's POWER」を発刊するほか、具体的な導入事例を示し経営の課題解決を同社ソフトでできることを解説する「IT活用応援セミナー」を、全国50か所、1万人を目標に実施する。昨年度から同社は、全国に支局を相次ぎ開設。同セミナーは、この拠点や「全国IT実践キャラバン2007」の「マイクロソフト号」の行き先で開催。「今年度、最大のチャレンジがこれ」（森上・業務執行役員）と、力が入る。

　同社は創設以来、SMBのIT利活用を支援する組織「IT推進全国会」の設立や情報提供サイト「経革広場」など、担当責任者が代わるたびに策を講じてきた。しかし、依然として光明を見い出せないでいる。一連のキャンペーンについて、費用に対する効果のほどを聞くと、「う～ん」と唸るだけで、やってみないと分からないといったところ。

　SMBのIT化向上は、同社だけの課題ではない。資金が潤沢な同社だから実施可能な部分はあるものの、SMB市場を目指す他のITベンダーにとっても“試金石”となる出来事といえそうだ。