主力ビジネスとの連携は!?

　2.5GHz帯の免許取得に対する取り組みでKDDIが複数企業との合弁で、モバイルWiMAXを中心に無線ブロードバンド事業を手がける「ワイヤレスブロードバンド企画」（田中孝司社長）を設立した。

　総務省が3G携帯電話の事業者に対して3分の1以下の出資比率が絶対条件としたため、KDDIはこれまで免許取得の枠から外れていた。ほかの通信事業者は提携などで“連合”を組み免許取得への意欲を表明しているなか、1社だけ取り残されていた感があった。今年10月12日までに免許申請しなければならない状況下、ここにきて免許取得に向けた取り組みに本腰を入れ始めた格好だ。

　企画会社の設立で免許を取得できるかは、総務省が決めることだけに未知数だ。しかし、共同出資に賛同した企業の顔ぶれをみると、KDDIの小野寺正社長兼会長が「確実に免許を取得できる。取得できないとは考えていない」と勇み立つのも分からないでもない。

　ワイヤレスブローバンド企画への出資は、KDDI（出資比率32.26％）をはじめとして、インテルキャピタル（17.65％）、東日本旅客鉄道（JR東日本、17.65％）、京セラ（17.65％）、大証券グループ本社（9.80％）、三菱東京UFJ銀行（5.00％）の6社。各方面から企業が賛同したことになる。ほかの通信事業者による連合軍とは異なり、さまざまな業界のノウハウを生かし「新しい市場を創造する」（ワイヤレスブロードバンド企画の田中社長）可能性を秘めている。なかでも、インテルが共同出資した点は大きい。ワイヤレスブロードバンド企画では、インテルが開発を進めているWiMAXチップをノートパソコンに組み込む「エンベデッド化」を事業構想に入れている。また、KDDIがワールドワイドの標準化団体「WiMAXフォーラム」でボードメンバーを務めていることに加え、他社に先駆けてWiMAXに関する研究開発を続けていたことから、「当社のWiMAX技術が世界標準に貢献する」（小野寺社長兼会長）という。さらには、サービスプロバイダである米スプリント・ネクステルとの連携で、国際ローミングによるユーザーの世界各国での利用を実現可能としている。

　ワールドワイドを網羅している点では、インテルの吉田和正共同社長が「国際標準で、しかもワールドワイドでも使えるという点が共同出資に賛同した理由の1つ」としている。こうした複数の要因で、業界では免許取得の最有力候補にのし上がったとの声も出ている。

　しかし、KDDIにとってWiMAX免許取得のメリットは何であろうか。主力の携帯電話ビジネスとの連携を視野に入れているとみられていたが、「企画会社と当社は、基本的に異なったビジネスを手がけていく」（小野寺社長兼会長）とのこと。「まずはパソコンから立ち上がる」という。しかも、携帯電話については高速通信が可能な「EV－DO」と呼ばれる技術の追求に力を注いでおり、「WiMAXを取得しても、研究を止めるつもりはない」としている。だからといって、新会社の具体的な事業について発表していない。“回線貸し”で主導権を握るという、新技術を取得しても既存ビジネスの踏襲におさまるかもしれない。