究極の「再利用」「横展開」だ！

　日本オラクル（新宅正明社長）は、国内中堅企業向けに提供するERP（統合基幹業務システム）に関する新パートナープログラム「Oracle Accelerate（オラクル・アクセラレート）」を開始する。同社の中堅企業向けERPの「JDエドワーズ」や業種パッケージ群、特化分野に導入実績のあるパートナーの特有部品などを組み合わせ、短期間で「パッケージ化」できる基盤ツールを提供するというもの。パートナーは、日本オラクルや他のパートナーなどがすでに提供している特有部品を「再利用」し、開発工数・コストを減らすことができる。加えて、特有部品は「知的財産権」を開発元のパートナーが所有するため、他社が「再利用」すればインセンティブが入る究極の「横展開」の仕組みといえそうだ。　同社が定義する「中堅企業」とは、年商100─500億円の1万3000社と同500─1000億円の1700社を指す。日本独自では、大企業向けERP「Oracle E－Business Suite（EBS）」の機能限定版として2003年から「Oracle NeO」を提供してきたが、今回で終了。米ピープルソフトの買収で得た「JDエドワーズ」を主体にEBSの機能などを加えた同社アプリケーションの総称「Oracle Applications」を、パートナーのノウハウを加えて中堅企業向けに提供する新しい仕組みを日本市場に投入した。

　今回の新パートナープログラムでキーとなるのは、「Oracle Applications」の短期導入パッケージ開発を支援するツール「Oracle Business Accelerators（OBA）」。このツールは、同社の「JDエドワーズ」や「EBS」「NeO」の会計や製造・調達管理、BIなど業界別の標準機能に、特化分野に強みをもつパートナーが受託開発したアプリケーションを標準化して加え、ユーザー企業に応じ部品を組み合わせ「パッケージ化」できる。

　具体的には、こういうことだ。「業界特有機能をERPに接続する場合、1からパラメータをセットする必要がある。例えば、このツールでパートナーの帳票システムを標準化すれば、新たなパラメータ設定は必要なく、プリセットで部品を増やせる」（三露正樹・常務執行役員）。SIerなど開発パートナーにとっては、アドオン開発が少なくなり、1案件の開発収益は減るものの、「案件ごとに割く人的リソースが減少し多くのシステム開発を並行して走らせることができ、開発失敗のリスク分散もできる」（同）と、案件数増大に貢献できる仕組みだと訴える。

　同パートナープログラムには、独立行政法人向けにシステム提供するY・C・Oや製造業、造船、商社や小売業など、特化分野に「強み」をもつ20社以上が参画。この先、40－50社に増やし、今後1年間で100案件、20－30億円の売上高を見込む。三露常務は「創出するマーケット規模は200─300億円だ」という。

　中堅市場にはオフコンが多く現存し、内部統制を強化する必要性からシステム再構築へ動いている。同市場へシフトするベンダーは相次ぎ、ここに日本オラクルが参戦することで、競争は熾烈を極めそうだ。